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人気漫画家・鳥飼茜が「女」という自分の性について考えるようになったきっかけ

 なぜ男は、鳥飼茜を「怖い」と言うのだろう。舌鋒鋭い論客なのか、はたまた好戦的な作風なのか。いや、さにあらず。彼女は今もっとも女性の生きづらさや恋愛のリアルを巧みに描く漫画家だ。現在3誌に並行して連載を抱え、そのどれもが話題作。なかでも『先生の白い噓』は、男女の性差がもたらす不平等をあぶり出し、高い評価を得ている。だが、そこに指摘される男女のすれ違いや女の本音を読むと、男はどうやら「鳥飼さんって怖そう」「会ったら怒られそう」と思ってしまうらしい……。 鳥飼茜――鳥飼さんが、「女」という自分の性のことについて考えるようになったきっかけは何ですか? 鳥飼:ウチは親戚がほとんど女性しかいない女系家族で、『おんなのいえ』の大前家のように父親がほぼ不在だったから、母が家事も経済面でもだいたい全部面倒を見てくれていて。でも、母は娘の私が、いわゆる「女っぽい」振る舞いをするのをとても嫌がって、髪を長く伸ばすのも禁止されていたんです。だから小さい頃は、『聖闘士星矢』の城戸沙織や『キャッツ・アイ』の来生瞳といった髪の長い女性に憧れて、チラシの裏に描き殴ってましたね。特に城戸沙織には性的な興奮を覚えてた(笑)。 ――性の目覚めが城戸沙織だったとは。確かに色っぽいキャラでしたね。 鳥飼:あと、父親が割と平気でエロ本やAVを家に置いておくような人で、男性が女性の裸を見て興奮するとか、女性の裸は売り物になるってことを、かなり早くから知っていました。それを見て自分も興奮していたけど、城戸沙織やエロ本の中の女性と、自分や母親とがどうしても結びつかなくて。自分とは違う「観賞用」のファンタジーな女の人がどこかにいてると思ってた。だから、高校で彼氏ができたとき、そういう性的な目線が自分に向けられるということが、最初は気持ち悪くて受け入れられなかったですね。そういう女のコは意外と多いんじゃないかな。 ――女性はそこで自分の性に違和感を抱くんですね。周りでは思春期の男子が下ネタで盛り上がる頃ですし。 鳥飼:当時は『稲中』が大流行して、私もハマって全巻集めたけど、男目線でブスが貶められたりする部分だけがどうしても好きになれなくて。同じ理由で、他人のツッコめるところを探してジャッジするようなダウンタウンのノリもすごく苦手やった。でも、関西やし同世代のコはみんなダウンタウン好きやったから、言い出せずに肩身が狭かったですね。
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古谷実さんのアシスタント時代
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