今なぜ右からの脱原発運動が必要なのか?
9月19日に東京で行われたデモに約6万人が集まるなど、全国で反・脱原発の声が高まるなかで、従来の「反原発=左翼」という概念を超え、保守・右翼側にもその動きが出ている。新右翼団体の一水会最高顧問・鈴木邦男氏は「『左翼を利するだけ』など反対の声もあるが、この非常時に右も左も関係ない」と話す。彼らが声を上げる“脱原発”とは一体何なのか。その姿を追った。
【右派を代表する論客3人が脱原発を語る】
デモ終了後、主催者である統一戦線義勇軍議長・針谷大輔氏、一水会最高顧問の鈴木邦男氏、右派の立場から脱原発を積極的にネット上で発信するnoiehoie(ツイッターネーム以下「no」)氏の3者が、今なぜ右からの脱原発運動が必要なのかを語り合った。
鈴木 右翼による脱原発デモというのは、おそらくこの試みが初めてでしょう。画期的ですよ。
no 針谷さんが脱原発デモを行うという話は、ツイッター上では燎原の火の如く広まりましたね。
針谷 これまでの僕らの活動のなかでも、原発をはじめ安全でないものはダメだと主張していたけど、残念ながら命題としては上位ではなかったんです。事故後に初めて「ああ、俺たちはちゃんと原発問題に取り組んでなかった。自分たちがもっと目を光らせていれば」と、反省しました。
鈴木 僕は「誰がやろうと原発反対には違いない」と思い、左翼的なデモにも参加しました。けど、そのなかの「素人の乱」(※)主催デモで、実は針谷さんも呼ぶ予定だったが、反対があって呼べなかったという話を聞いた。「団体で隊服を着て来るんじゃないか」と恐怖感を持ったのかもしれないけど、左翼の人はやはり、右翼に対して拒否反応がある。
針谷「素人の乱」からの依頼は一度は了解したんですが、左翼の人間の反発に遭い、できなかったんです。ただ、なんで了解したかといえば、緊急時にイデオロギーは関係ないからです。実際にデモに参加している大半の人はツイッターとかでデモを知って集まった、いたって普通の人たち。今は昔からの活動家なんかよりも、彼らの行動力のほうがスゴイ。そういう人たちが参加してるなら、俺たちも一肌脱ごうと。そうしてせっかく脱原発に右も左もないという、いいラインに乗るチャンスだったのに、俺を排除したがために案の定、公安警察が「素人の乱」は左翼のデモだと決めつけるような状況になっている。そんな状況をどう変えていくか。じゃあ、こっちから声を上げるかと。右も左も関係ないという前提で、「右から考える」と入れはしても、本当はみんなで考えると言ってるわけです。
⇒『右翼と左翼は一緒にデモができる』に続く
※ 素人の乱:東京・高円寺でリサイクルショップ「素人の乱」を経営する左翼活動家・松本哉氏らの呼びかけで行われている脱原発デモ。
【noiehoie氏】
ツイッターやブログなどを中心に活発な言論活動を行う。「保守/右翼であるからこそ、排外主義と戦わなければいけない」が持論
【鈴木邦男氏】
一水会最高顧問。産経新聞社勤務などを経て、’72年に新右翼団体・一水会を結成。’99年に顧問就任。近著に『新・言論の覚悟』(創出版)
【針谷大輔氏】
統一戦線義勇軍議長。’87年に住友不動産会長宅襲撃事件に参画した。現在は新右翼を代表する人物として弁舌、活動を展開する
― 右翼だって反原発その主張を聞いてみた【5】 ―
この特集の前回記事
ハッシュタグ