映画版『空母いぶき』は「三流役者」ならぬ「三流映画」だった/古谷経衡
「三流役者」ならぬ「三流映画」だった『空母いぶき』
そもそも、当該のインタビュー記事は同号の『空母いぶき』特集の巻頭5頁における1頁にすぎず、誰もこの原稿用紙2枚程度の佐藤氏のインタビューを読まずに、批判する側と擁護する側の無意味な空中戦が行われる結果となった。 さて、では5月24日から公開の映画『空母いぶき』で、「安倍総理を揶揄する」描写が同映画のなかにあったのかというと、ワンカットもない。それどころか、「安倍総理云々」以前に、この映画には「そもそも映画として異様な完成度の低さ」という別の問題が浮上してしまったのである。 原作のかわぐちかいじ氏の漫画では、近未来、日中が尖閣諸島を巡って対立するなか、中国人民解放軍が沖縄県の先島諸島を限定占領することにより、日本は太平洋戦争後初めての「戦争」に突入する。つまりこの作品は、現実の国際情勢(特に日中関係)を背景にした高度なポリティカル作品であり、と同時に『沈黙の艦隊』以降、かわぐち氏の得意とするミリタリー作品でもある。 つまり『空母いぶき』とは、骨太のポリティカル・ミリタリー作品なのだが、実写版ではこの要素が全くないどころか原作改悪のオンパレード。そもそも映画版では、日本の敵として、中国ではなくフィリピン北東部にあるという建国3年のカレドルフ(なぜかこの国家は東亜連邦と名乗る)という新興島嶼国家というふうに設定が改悪されている。三流役者が、えらそうに!!
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
何がぼくらの世代では、だ。
人殺しの役も、変態の役も、見事に演じるのが役者だろうが! https://t.co/UReRTd6KNe
1
2
(ふるやつねひら)1982年生まれ。作家/評論家/令和政治社会問題研究所所長。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部史学科卒。20代後半からネトウヨ陣営の気鋭の論客として執筆活動を展開したが、やがて保守論壇のムラ体質や年功序列に愛想を尽かし、現在は距離を置いている。『愛国商売』(小学館)、『左翼も右翼もウソばかり』(新潮社)、『ネット右翼の終わり ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)など、著書多数
記事一覧へ
記事一覧へ
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ