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道徳が教科ではないことが何故問題なのか?【やなせたかし氏の実話を教材にする狙い】

渡部昇一氏

渡部昇一氏

 政府の教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学総長)は昨年、「道徳の教科化」を提言し論議になっている。下村博文文部科学大臣も強い意向を示していると報道された。その背景には日本人の規範意識の低下があるという。最近では、若者がコンビニの冷蔵庫に入った写真などをTwitterに投稿したバカッター騒動や滋賀県大津市の中学校で起こったいじめ自殺問題などが記憶に新しい。  道徳が教科ではないことが何故問題なのか。それは、正式な教科ではないが故に教育現場では他の教科や学校行事などに振り替えられるなどして形骸化しているのが実態だという。  また、「子供の心を感動させる教材が少ない」ことも道徳を形骸化させている一因だと言われている。読者の方の中には、「学校で道徳の授業はやった記憶はあるけど、何をやったか覚えていない」という人は少なくないのではないか。現状の道徳教材の多くが出版社の作り話でリアリティがなく子供の心に届いていないと考える意見だ。  では、道徳教育はどうあるべきなのか? 『はじめての道徳教科書』(育鵬社)を編集した道徳教育をすすめる有識者の会・代表世話人の渡部昇一氏はこう話す。 「子供はいい話、感動的な話が好きです。子供にいろんな話をすると『その人いい人? 悪い人?』とすぐに聞いてきます。子供は何が良いか、何が悪いかにとても敏感なのです。だからそのような時期に、『こういう事が、良いことなんだよ』と教えることが大事です。そのためには、優れた人の話を読ませる、これが一番です」  本書では昨年亡くなられたアンパンマンの作者で知られる、やなせたかし氏のある実話も教材に選んでいる。  採用されたエピソードは東日本大震災の直後にあるラジオ番組に読者の方からメールで「アンパンマンのマーチ」のリクエストがあり、この曲を流したところ1週間で125通もの感動の声が寄せられ、投稿サイトのツイッター上でも反響があったという話だ。  やなせ氏は「『なんのために生まれて、何をして生きるのか』という歌詞があります。いま、そのことがわからない人が多い。でも、生きていることが理屈なしに大切なのです」と、東日本大震災の被災者にエールを送っている。  渡部氏は本書に日本人の道徳心を復興させる1冊になって欲しいという。 「世界の常識では大災害がおきると、必ず混乱に乗じて暴行や略奪が起こります。しかし、日本では、東日本大震災のような非常時でも略奪などはほとんどありませんでした。そして被災地ではそれぞれが被災者にも拘らず、相手のことを思いやり、規律正しく行動しました。この日本国民の冷静さや規律正しさに世界中が感銘し、賞賛しました」  その他にも元メジャーリーガーの松井秀喜氏やパラリンピック・走り幅跳びの佐藤真海選手の実際にあったエピソードなど33話を採用。新しい道徳のスタンダードを提案している。 <取材・文/吉留哲也>
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