更新日:2014年03月01日 09:09
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高額自己啓発セミナー参加者が激白。効果もあったがその後は……

自己啓発

こうしたセミナーの講師はヘッドセット型マイクがお好みのようで、アンソニー氏も例外ではない

「コーチングの第一人者」、アンソニー・ロビンズ氏が4月11日に来日し、千葉・幕張メッセで3日間にわたってセミナーを開催するという。  ビル清掃のアルバイトをしていた17歳の頃から約700冊の本を読み、独学で自己啓発を学んだというアンソニー氏。彼のセミナーには、ビル・クリントン元大統領、故ロナルド・レーガン元大統領、ジョージ・ソロス、故ダイアナ元妃、テニスプレイヤーのセリーナ・ウィリアムズやハリウッドスターなど世界的有名人が訪れ、最近ではレディー・ガガやオプラ・ウィンフリーなども参加したとされる。チケットの値段はS席が25万8000円、A席が14万8000円、一番安い席でも9万8000円と高額。VIP席はなんと98万円!まさに自己啓発の世界的権威なのである。  実際にこうしたセミナーは、どれほどの効果をもたらすのか?  そこで、アンソニー氏のものではないが、同種の自己啓発セミナーに参加して年収を5倍に増やした人物を取材した。  整体院を営む高橋正英さん(仮名・36歳)は、数年間売り上げが伸びず悩んでいた。そこで出会ったのが、「100億円規模の事業の元経営者」なる人物が講師を務めるセミナー。広告ナシの完全紹介制で、講師はマスコミに一切出ることはなかったが、自営業者や自己啓発に勤しむ人々の間では有名な存在であった。だが代金は2日間約20時間で60万円と超高額。 「何よりも焦っていたし、60万円なくした程度じゃ死にはしない。これでダメなら諦めようという気持ちで一気に支払いました」(高橋さん)  セミナーはこれまで持っていた経営理念や経済観念を覆すほどの衝撃を高橋さんに与えた。また、講師による個人コンサルティングも付いており、整体院の経営についてもアドバイスを受けた。 「『無理やり営業をするな』、『客に疲れた顔を見せるな』、『〇時と〇時は閉店して休め』など、飲み屋のオヤジ程度の助言でした。半信半疑だったのですが、すべて素直に実行したところ魔法のようにバンバン客が入るようになり、年収は約5倍の1700万円に達しました」  それからというものの、高橋さんは同じ金額を払って何度も何度もセミナーに出席し、知人・友人にも熱心にセミナーを勧めるようになった。しかし、ある出来事をきっかけに高橋さんはセミナーとはスッパリ縁を切ることになる。 「だんだんと講師が増長していくのを目の当たりにしたのです。疑問を持とうものなら『俺の言うことだけ聞いていれば良いんだ』など聞くに堪えない暴言を吐かれるようになって、不信感が募っていきました」  実は筆者も、高橋さんの熱心な誘いに根負けしこのセミナーを申し込んだことがある。職業柄「怖いもの見たさ」から、また何よりも高橋さんの年収を3か月で5倍にまで引き上げたセミナーとはいかなるものなのか?という点をどうしても知りたく、数週間悩んだあげく意を決して60万円を振り込んだのであった。振り込みの際は、さすがに涙目であったが……。  だがいよいよ迎えたセミナー前夜、高橋さんより一本の連絡が。 「セミナーは中止だそうです」  どうやら、前述の理由で講師と古参の生徒の折り合いが悪くなり、トラブルの収拾がつかずセミナーを開催できる状況ではなくなったということだった。すぐに、主催者側から返金の知らせも入ったが筆者はセミナー中止に対する残念さよりも「ヨッシャー!!!60万円返って来たー!!」という喜びが爆発。自身の凡人ぶりを再確認したのであった。  それ以来、自己啓発セミナーの類は卒業したという高橋さん。 「でも、振り返ってみると講師の言っていた内容は正しかったんだな、と思う場面が多々あります。彼のアドバイスで売り上げが伸びたという事実は変わらないし、無料で転がっている情報なんかよりはよほど価値があるのは間違いない。まったく効果がないとは言いきれないと思いますけどね」  今でも順調に業績を伸ばしている高橋さんは、情報を生かすも殺すも結局は自分次第だと話す。  自己啓発セミナーも玉石混交であるが、参加しただけで自動的に成功することはあり得ない。ましてや商用目的で数十万円~数百万円もの金額をつぎ込むのであれば、高橋さんのように結果を出してただちに全額回収したいところである。ただ、それができる資質の有無は、申し込む前から既に決しているのではないだろうか。  実に非情ではあるが…… <取材・文/安宿緑>
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