金慶珠vs周来友 激論「嫌韓ブームの正体」

 ニュースでは連日、日中韓の関係悪化が報じられ、書店には関連書籍のコーナーが設けれる――空前の“嫌韓ブーム”が世を席巻している。冷静さに欠ける報道や言説も飛び交う中、日本に住み、かつ韓国・中国にもルーツを持つ有識者はこの現象をどのように捉えているのか。論客として知られる金慶珠氏と周来友氏を招き、1時間半に渡り激論を交わしてもらった。

――日中日韓の関係が冷え込む一方、日本人の中国や韓国に対する感情も悪化しています。

金慶珠氏

金慶珠氏

金慶珠:(以下、金)諸々の要因はありますが、やはり根底にあるのは、アジアのパワーバランスの変化の中で日本社会が感じている閉塞感ではないでしょうか。経済では中国には抜かれ、韓国にもある産業分野では脅威を感じている。

これまではとるに足らない存在で、興味すらなかった相手に対し余裕がなくなってきている。 そんななか、歴史問題や領土問題とも絡んで『韓国人は嘘つきだ』とか『国に帰れ』などという攻撃的言動が横行している。その意味で、私は昨今の「嫌韓ブーム」は、日韓の問題ではなく、日本国内の社会問題であると見ています。

周来友:(以下、周)本来なら、日本はもっと堂々としていればいいと思うんですけどね。『日本はすごいんだ』とか『世界から尊敬されているんだ』とか言っている出版物やテレビ番組が目につきますがそれ自体、自信喪失の現れ。私が言うのもなんだけど、技術や社会秩序、文化など、中国や韓国がどう逆立ちしても50年は絶対に叶わない、日本はいいものを沢山持っているじゃないですか。長年日本に住んでいて日々感じているんです。

金:安倍政権は『強い国日本』というスローガンを掲げていますが、そもそも日本は強い国。GDPで中国に抜かれて第3位になったからといって、4位のドイツとの差も歴然で、当面は抜かれる可能性があるわけでもない。

それなのに、排外主義の動きが高まっているのには、 日本の外国人居住者の少なさも一因だと思います。全人口に対する外国人の割合は、ヨーロッパで11%ほど、韓国は3.1%ですが日本は1.6%しかない。異質なものに対する不慣れ、という事情もあるのではないでしょうか。

周:それは仕方のないことですよ。何しろ、日本はよくも悪くも島国ですからね。しかも目をいつも欧米に向けているんです。近頃、ヨーロッパが移民に悩まされているのをみて、余計に心配して逆戻りしようかなと動揺する部分もあります。

金:対韓感情に限って言えば、ブレ幅が大きいことも気になります。内閣府の調査によると、2011年には日本人の約62%が韓国に対して親しみを感じていたのに、翌年には39%台に急落しているんです。李明博の竹島訪問や、天皇への謝罪要求が取り沙汰された事などが背景にあるのですが、こうした大幅な変化は中国や他の諸外国に対しては見られない特徴。

周来友氏

周来友氏

周:それは韓国の日本に対する態度がブレているから、というのもあるんじゃないですか? 韓国の大統領は就任当初は対日政策で未来志向を打ち出したりするのに、支持率が落ちてくると急に強硬な反日に転じるじゃない?

ある意味ではその点、中国政府の対日政策は一環していると言えるかもしれない。日本の協力を、昔は資金の面で、今は技術的な面で得ながら、日本にはいつも厳しい視線を注いています。それは日本には叶わないんだと敬意を払わざる得ない部分もあれば、警戒しなければならない要素もあると感じているからだと思うよ。

金:残念ながら、韓国人の対日感情は「親しみを感じない」で一貫しています。因みに、「大統領の支持率と反日」との関連性は日本のメディアが作り上げた一種の都市伝説のようなものです。事実、それを裏付ける具体例もないまま、韓国側の対日強硬姿勢が見られると、それは韓国内の政治事情によるものだと決めつけるんですね。

それにしても、SPA!も含めてですが、マスメディアによる最近の嫌韓・嫌中ビジネスはちょっと酷い。おそらく在日の中国人、韓国人ならずとも冷静な日本人ならみんな違和感をもっていると思いますよ。今日はそこを質そうと思ってやって来たんですが、私が呼ばれたということは御誌は方向転換されたんですか?(笑)。

例えば最近起きた観光船沈没事件では、日本のメディアは我先に逃げ出した船長や乗組員のことばかりを伝えていますよね。実際には修学旅行生の救助にあたって命を落とした女性乗組員や教師も大勢いたんです。しかしそのことはほとんど報道されない。結果、日本のネット上では、韓国人批判が書き立てられている。まず先に韓国憎し、があってニュースが作られていく。テレビもこれに便乗する。こうしたメディアによる空気作りによって、どんどん溝が深くなってしまっている印象が拭えません。

周:まあ、その方が売れるんだからしょうがないじゃない(苦笑)。活字離れと業界の人が心配する中、ネトウヨの方がよく本を買ってくれるんだよ。でも往々にしてそういった記事を書いている人って、個人的に会って話すと意外と親中、親韓が多かったりするんですよ。両国に詳しくなるにつれて、いい面も悪い面も見えてくる。

ただ、彼らもメディアからお金をもらっている立場だから、空気を読まなきゃいけないし、『悪い面を書いてくれ』と言われれば従わざるを得ないでしょ、本音はいつも隠されるんですよ。

金:そうした状況こそが問題なんです。メディアに関しては『利用と充足』という理論にもあるように、人々は正しい情報を得ようとするのではなく、自らが欲しい情報を選択して集めるという傾向がある。しかしメディアはそこに迎合していていいんでしょうか。特に「ワイドショー」などと呼ばれる日本独特の情報番組のジャンルでは、報道の形を取りながらも、ジャーナリズムとは程遠い興味本位の主観的な解説や論調が目立ちますね。

私も韓国に在住経験をお持ちの日本人専門家で、韓国では日韓友好を強調しながらも、日本への帰国後には一転して韓国の批判に終始している方を何人も知っています。

それだけ、お互いの国で、お互いについて本音で語ることには、まだまだタブーが多いことを痛感させられます。特にマスメディアという空間では、大衆の欲望こそが「正義」として扱われ、専門家と称される人々でさえも、その前では萎縮してしまうことが残念でなりません。

周:でも悪い面だけでも、取り上げられないよりはいいと思う。相互理解のためにはまず相手に興味を持って、相手の事を知るということが大切。だから負の面から入ってもいいんです。日本のメディア各社も嫌中・嫌韓一辺倒ではさすがに飽きられるので、じきに売り方を変えてくると私は楽観的にとらえています。

――確かに偏向報道は問題ですが、中国や韓国もメディアが日本叩きをやっていますよね?

周:中国は言論統制がある国だから、メディアが政府の意図を汲んで報道するのはある意味しょうがないんです。それでも一部の反骨精神を持ったジャーナリストたちは、ギリギリまで頑張っているんです。それに比べて、日本は言論の自由が認められているのにもかかわらず、結局は商業主義に冒されて偏向報道に陥ってしまっているのはちょっと残念ですよね。日本には検閲がないかも知れないけど、自粛が結構多い気がします。

金:もちろん韓国も例外ではありません。いわゆる「国民感情」という名の下で、過剰な日本批判が蔓延っているのも事実です。ただし韓国の場合、メディアの日本批判は、かつてに比べると徐々に改善されてきていると感じますます。日本に対する理解も進み、そういう意味では国民にも耐性が出来ている。政治や歴史認識の問題と、社会や文化的交流の情報を区別して受け止めるようになってるんですね。

ところが日本の場合はむしろその逆。中国や韓国批判をするようになったのもここ数年の話ですが、相手国に対する情報も理解も不足していて、国民にも耐性がなく、「反日」か「新日」、「善玉」か「悪玉」などと単純化してとらえる傾向が顕著になっています。

周:確かにね。日本人はメディアに流されやすいところもあると思う。中国では言論統制下のメディアの言うことを鵜呑みにする人なんていない。12年の反日デモに参加していたのも、「憤青」といわれる知識レベルの低い少数派です。日本の排外デモの参加者も、負け組が多いと言われているんですよね。中国で反日活動をやってる連中と在特会の連中は、実は気があうんじゃないかと個人的には思うんですが(笑)。

反日は政策であって、中国国民の多くは日本への旅行や電気製品、アダルトビデオなどを通して日本の素晴らしさを知っている。ところが残念なことに、日本人は中国韓国についてあまり知らないんですよ。彼らが知っているのはマスコミに見せられた両国の一部に過ぎない。

金:確かにその通りですね。日本人が韓国に興味を持ち始めたのはここ10年くらい。予備知識がない中で、日本の嫌韓は、相手を知らないままに負のイメージだけを巨大化させている。それに比べ、韓国の最近の世論調査では、国民の7割が日本に対して好意を感じないと答えている反面、日本の長所については8割が認めている。韓国人にとって、日本は常に関心の対象であったために、日本のいいところも悪いところもよく知っているんです。(次回に続く)

【金慶珠氏】
韓国に生まれ、幼少期を関西で過ごし、現在は東海大学教養学部・国際学科で教鞭をとる、日韓双方に長い在住経験を持つ論客。近著に「日本が誤解される理由」(イースト新書)などがある

【周来友氏】
1963年、中国浙江省紹興市生まれ。1987年に私費留学生として来日し、タレント・ジャーナリストとして活躍

<取材・文/日刊SPA!取材班>

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