なぜ独裁型の政治家が増えるのか? その鍵は「反の経済法則」にあった
―[資本主義の限界]―
日本経済再生への足取りは鈍い。日本経済はどうしたら再生できるのか。「反の経済」という概念によって、日本の経済局面を「かつてない危機的状況」と説明するのは、名城大学都市情報学部の木下栄蔵教授だ。しかも、「反の経済」下では、経済は停滞し政治が独裁化しやすいという。その真意とは?
木下:そもそも、経済にはふたつの局面があります。一つは経済学者のアダム・スミスのいう「モノをつくることは美徳であり、モノをつくればすべて売れる」という局面です。そこでは供給が需要を上回っても、価格が調整されることにより需要が増大し供給と一致していきます。一方、ケインズは「需要が供給をつくる」と主張しました。アダム・スミスは「供給が需要をつくる、政府の介入は必要ない」といい、ケインズは「需要が供給をつくる、政府の介入は必要だ」といっています。経済学のふたつの理論は真っ向から対立してきました。
――そのふたつの経済学を統合したものが、木下教授が提唱している「正の経済」と「反の経済」の概念であると。
木下:「正の経済」ではアダム・スミスが正しく、「反の経済」ではケインズが正しい。「正の経済」では「供給が需要をつくる」し、「反の経済」では「需要が供給をつくる」。「ひとつの経済に対してふたつの視点」がありましたが、そこに「正の経済」と「反の経済」という概念を持ち込むことによって「ふたつの視点がひとつの経済学」へと統合されるのです。
――では、「正の経済」、「反の経済」とは具体的にどういった状態なのでしょうか?
木下:「正の経済」とは、「デフレギャップのない状態」です。デフレギャップとは、供給と需要の差です。アダム・スミスの見ていた世界では、モノはつくれば売れるため、供給と需要は常に一致し、デフレギャップは存在しません。しかし、実際の日本では「供給が需要を上回った状態=デフレギャップ」が発生しています。このデフレギャップの存在こそ、「反の経済」の特徴です。「反の経済」とは「デフレギャップが存在する状態」を指します。
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『資本主義の限界』 日本経済が延々と低迷を続ける理由は「たった1本の経済線」で解き明かせる! |
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