「本物のアイドルポップスを俺が復活させる!」イカ天出身のバンドマンが仕掛けるアイドルグループLONDON BLUE
――音楽業界の中でも屈指の論客として知られる青木。あくまでも上から目線を崩さず、大風呂敷を広げていく姿勢には爽快感すら覚える。「僕なんかが偉そうに語るのもおこがましい話だけど」と一応は謙遜しつつも、舌鋒鋭く現在のシーンを斬っていく。
青木:「沸く曲」という表現があって、今のアイドルソングはライブ現場で騒ぐための要素が重要視されるんです。「MIX(ファン参加型の歓声)が入れやすいか?」とかね。だってアイドルのライブに行くと、ファンなのに曲を聴かないで騒いでいる人が結構いるんですよ。最初に見たときは衝撃を受けました。そもそも僕から言わせると、音楽っていうのは家でも聴けるもの。昔のアイドルソングは娯楽として家でも聴けたけど、今のアイドルソングの多くは沸くことだけに重きを置いている。だって今のアイドルソングを、20年後にも歌い続けることができますか? 現在のアイドルを批判する気はないし、それはそれで盛り上がっていて結構なんだけど、どうも違和感を覚えるんですよ。「これが本当のポピュラリティなのか?」って……。
逆に自分がいいなと思うのは、AKB48でよく曲を書く井上ヨシマサさん(『大声ダイヤモンド』『涙サプライズ!』『Everyday、カチューシャ』などを作曲)。秋元康さんっていうのは、本当はもっと楽曲を掘り下げてほしいタイプじゃないかと思う。秋元さんはAKB48を通じて、70年代歌謡曲のような国民的ヒットソングを作りたかったはずなんですね。だけどこれだけの社会現象になると、どうしてもビジネス的な側面が強くなる。AKB48が音楽的に語られることが少ない現状は、秋元さんとしても不本意なんじゃないかな。
キャッチーであることに対する青木のこだわり方は尋常でない。「わかる奴だけがわかればいい」といったクリエーター特有のエゴイズムは皆無で、1人でも多くの消費者に届くようにと全身全霊を注いでいく。外見はド派手なバンドマンなのに、実はゴリゴリの裏方志向。フィル・スペクターや筒美京平をリスペクトしてやまないという根っからの職人気質なのだ。
青木:そもそもキャンディーズやピンクレディーがあったからこそ、今のアイドルシーンが存在しているわけですし。あるいは都倉俊一先生、森田公一先生、阿久悠先生、鈴木邦彦先生といった職業作家の方とか。そういった偉大な先人たちに対して、自分自身が顔向けできる音楽を作っていきたいですね。それに今のJ-POPは歌詞に主観的な表現が多く、万人が共感できない構造になっている気がするんです。
趣味が細かく細分化され、真の意味で国民的な大ヒットが生まれにくい時代になったと言われている。だが青木は、そのことについても主張したいことがあるという。
青木:昔は洋楽を聴く人が邦楽を一段下に見る風潮があったんです。逆に邦楽リスナーは洋楽を敬遠していてね。その洋楽と邦楽の壁っていうのはLOVE MISSILEがグラム歌謡を提示したり、ZIGGYの森重(樹一)君、ROLLY、THE YELLOW MONKEYの吉井(和哉)君なんかが世に出ることで取り除くことができたと思っています。そして今、強く感じるのは“アイドルしか聴かない層”が出始めているということ。一方でJ-POPを普通に聴く層の中には、アイドルというだけで聴かない人が多い。つまり大衆的な歌謡曲であるはずのアイドルソングが、一種の孤立状態にあるんです。僕はそういった状況をLONDON BLUEで変えていきたい。
ここまで言い切るのは、自身の才能に対する信頼の裏返しなのかもしれない。そんな青木が生涯をかけた課題として挙げるのが「オリジナリティとポピュラリティの両立」。ミュージシャンだったら、おそらく一度は考えるテーマだろう。
青木:オリジナリティだけを追求するのは、意外と簡単なんですね。一風変わったことをすればいいだけだから。だけど、やっぱり大衆性がないとポップスとは呼べないはず。僕が大好きなプロデューサーで、マイク・チャップマンというプロデューサーという人がいるんです。スージー・クアトロなんかのUKバブルガムポップを作り上げた人なんですけど。あるいは日本でも人気だったベイ・シティ・ローラーズ。LONDON BLUEは、そのあたりのテイストを打ち出すというのが基本的なコンセプト。要は、ときめき感のあるキラキラしたサウンドです。
70年代のバブルガムポップは「受けてナンボ」という姿勢が一貫してあったし、それゆえに「女・子供が聴く音楽」と揶揄されていた。まぁ実際、明らかに頭が悪そうな音楽ですしね(笑)。だけど本物のバカじゃ、キャッチーなものなんて作れないですよ。曲自体も決して単純な作りにはなっていないですし。おもいっきり頭を使って、頭の悪そうな音楽をやる。これがポップスの本質なんです。
バカバカしいものやチープな匂いがするものに対する青木の情熱は、LONDON BLUEのメンバーにも注がれる。バンド活動を始めて1年半、4人のプレイは正直まだ稚拙な部分も目立つ。だが、青木は「演奏力なんて、さほど必要ない」と断言。テクニックよりも大事なのは演者の個性が見えることであり、逆に演奏が上手すぎると青木の追求するB級の美学から外れてしまうというのだ。
青木:ローリング・ストーンズよりもニューヨーク・ドールズに惹かれてしまう自分がいるんです。B級だからこそ醸し出せる下世話な感覚や猥雑さ……そのへんのニュアンスは大事にしていきたい。もっともLONDON BLUEの若いメンバーたちがキッチュな感覚を理解しているかといったら、はなはだ疑問ですけど(笑)。今後の展開については、メジャーのフィールドで勝負したいというのがひとつ。そして、そこで売れたい。だけど結局、売れる方程式ってないんですよね。だからこそ、とんなにすごいプロデューサーだって失敗することがあるわけで。だけど、売れない方程式というのは確実に存在する。それを僕たちはいろんな経験を通じて知っているからこそ、彼女たちには絶対に同じことをやらせない。それともうひとつ言えるのは、芸事をやっていて品格のない奴が売れたためしはない。そういう意味では、この4人は期待できるんじゃないかと思っています。替えのきかない音楽を作っている自負もありますしね
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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