50歳で芽生えた「死生観」、そこに込めた作品への思い【人間椅子・和嶋慎治インタビュー】
―[和嶋慎治]―
1989年に放送された深夜番組「三宅裕司のいかすバンド天国」(略して「イカ天」)は、数多くのバンドを世に生み出し、社会現象になった。その一つが「人間椅子」である。ギター、ベース、ドラムという3人編成というシンプルなメンバーだが、それぞれがヴォーカル、作詞作曲を担い、独自の音楽性でハードロックを歌い続けてきた。いわゆる「音楽で飯を食う」のが厳しい時代を長く過ごしてきた彼らだが、ここ近年の再ブレイクぶりがすさまじい。昨年の渋谷公会堂の満員ライブ、筋肉少女帯とのコラボレーション、「Ozzfest JAPAN」への出演など、注目度も高かった。そんななか、人間椅子は息つく暇もなくニューアルバム『怪談 そして死とエロス』を完成させた。ギターとヴォーカルの和嶋慎治氏に、昨今のブレイクやアルバムへの思いを聞いてみた。

50歳を迎えたからこそ「死」をテーマにできた

いつの時代もロックはキャッチーなもの
――昨年の活躍もあり、和嶋さんご自身のターニングポイントもあり、今回のアルバム制作はとても気合いが入ったのではないでしょうか? 和嶋:すごくいいアルバムができたと思っています。忙しくなった分、限られた時間で作ったんですけど。実はこれ、12月にレコーディングしたんです、リリースをするには非常にギリギリの納期です。11月は「Ozzfest JAPAN」に集中していたから。それで、世の中には年末進行という恐ろしいものがあるでしょう? 12月末と1月頭はすべての作業がストップしちゃうという。だから、これまでアルバムを作ってきたなかで、時間的にも一番きつかったですが、その分、集中力を発揮することができたのではないかと思っています。 ――作詞のほとんどを担う和嶋さんがまずテーマを決められて、メンバーと共に作り上げていくという流れでしょうか? 和嶋:一応コンセプト担当なので。テーマは「怪談」。これはなかなかいいとメンバーに伝え、そこに焦点を合わせて曲づくりをしていきました。ベースの鈴木君も、ドラムのノブ君もそのことを意識してリフを作る。もちろん僕自身もです。結果的に、バラエティに富んだ、キャッチーさがうまく出たものになりました。やっぱりそれは、近年、いろんな人たちと対バンするなかで思うところがあったんです。「Ozzfest」を見るとね、キャッチーなんだよね、海外の一流の人たちは。やっぱりそこだなって思うことがあって。最後の最後で「Ozzfest JAPAN」に出られたのはよかった。ロックはキャッチーなもの。キャッチーさがないとおもしろくないわけ。どんな怖いことを歌っていてもね。 ――アルバムのビジュアルも怪談的な要素が満載ですね! 和嶋:そうです!でもですね、これジンクスなんですけど、髑髏(しゃれこうべ)とか直接「死」を象徴するものはビジュアルに入れるべきではないというのがあって。そういうのをビジュアルに入れてしまうと、いろいろとうまくいかなくなるんです。端的に言うと売上とかに響くというか。もし、知り合いのバンドがそういうのをビジュアルに入れようとするなら止めますね。バンドとしては死に近づけちゃうんだと思います。なので、このアルバムもあまりリアルな「死」は出さないようにしました。初回盤には、ちょっとだけ心霊写真っぽい要素は入っているんですけどね(笑)。 そんなわけで、2曲目の『芳一受難』という曲に般若心経を入れてみました。それで成仏していただけるかなって。「この世に執着しないでください」って、意味も込めてみました。本当に入れてよかったですね。

―[和嶋慎治]―
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『怪談 そして死とエロス』 2014年より各ライヴハウスがソールドアウトになるなど、これまで以上の盛り上がりを見せ、その人気ぶりが再熱している人間椅子が満を持して放つ、通算19作品目のオリジナル・アルバム。 ![]() |
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『和嶋慎治 自作エフェクターの書「歪」【プリント基板付】』 和嶋慎治の自作エフェクター道 ![]() |
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