全力で普通に接して、厄介な上司から自分を守れ
アドラ猫「どんなに性格が悪くても能力がなくても、上司にムカつくのはエネルギーの無駄だ。上司だけじゃない。先輩でも同僚でも同じことだ。注意されてその内容が妥当なら参考にすればいいし、的外れなら聞き流せばいい。こっちの人格まで否定されたわけじゃないのに、わざわざ大げさに受け止めるのは自分の側に理由があると考えよう」
ダメラー部下「人格を否定するような言い方で罵倒されたらどうすればいいんだよ」
アドラ猫「部下にそんな態度で接する上司なんて、まともに相手しなくていい。心の中で軽蔑しておけば十分だ。エキサイトしている様子を一歩引いて観察するのも、なかなかオツかもしれない。うっかり吹き出してしまわないように気を付けたほうがいいけどな」
ダメラー部下「そんな不真面目なことでいいのかなあ」
アドラ猫「こんな大真面目なアドバイスがあるか。いちばん大事なのは自分を守ることじゃないのか。守れば海路の日和ありだ。アドラーの教えをベースにして、手段を選ばず有効な方法を追求するのが『大人のアドラー力』である」
ダメラー部下「接し方はどうすればいいんだ。つい不満そうな顔をしてしまうのも我慢するのか」
アドラ猫「我慢するんじゃない。全力で普通に接することを楽しむんだ。こっちが普通に礼儀正しく接しているうちに、相手の態度が変わってきたら面白いぞ。変わらなくても、それはそれで面白い。半端に不満を顔に出そうとしたって疲れるだけだ」
ダメラー部下「わかったよ。とりあえず、ちょっとずつやってみるよ。そうだ、ソーセージがまだ残ってるけど、食べるか? ほら、中身だけ出してやるよ」
アドラ猫「ウホッ、ありがたくごちそうになるにゃー!」
ダメラー部下「おお、いいかぶりつきっぷりだな。ん、あれ? もうどっかに行っちゃった」
<アドラー猫直伝!>
●上司との関係にストレスを感じているときに有効な「大人のアドラー力」
その1 相手の性格や能力を変えようなんて思わず、冷めた目で見つめよう
その2 言い方にケチをつけてないで、注意された内容だけ受け止めればいい
その3 とりあえず自分にできる範囲に関しては、手を抜かずにきちんとやる
<アドラ猫の「アドラー用語辞典」>
【課題の分離】
アドラー心理学の肝となる考え方。たとえば、部下の働きっぷりに不満があるとしても、どう働くかどうかは結局は本人の問題であり、こっちはどうにもできない。どうにもできないことをどうにかしたいと思うから、話がややこしくなる。自分に対する他人の感情も評価も、こっちにはどうしようもない。昔の諺で「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」というのがあるが、まさにそれが「課題の分離」である。
【勇気づけ】
アドラーは、他人を動かしたい、いい方向に変わってほしいと思ったときに大切なのは、本人が自分に自信を持つための「勇気づけ」だと強調する。前提にあるのは、上司と部下でも親と子でも、その関係は「縦」ではなく「横」だとする考え方。ホメるという行為は縦の関係を前提としている。頭ごなしの叱責や原因の追究は、やる気も自信も失わせる「勇気くじき」でしかない。感謝を伝えるのは、「勇気づけ」の基本であり必殺技である。
<文/石原壮一郎>