プロレスラーと結婚とフツーの幸せ――フミ斎藤のプロレス読本#021【ロード・ウォリアーズ編6】
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1344250
やっと終わった離婚の裁判で、ホークはプール付きの豪邸からサイクリング自転車まで、持っていたもののほとんどを前夫人にあげてしまった。
ホークは、それからしばらくしてガールフレンドをつくった。25歳、2児の母、未婚というかなりのツワ者だったが、この彼女とはすぐ別れた。
またしばらくして立ち直ったホークは、さかんに男の友だちとお酒を飲みにいく機会をつくった。そして、恋人がいなくても、楽しくハッピーに生活できるようになっていった。
前夫人は「アンタには友だちって呼べる友だちがひとりだっているの? アンタが友だちと思ってる人たちは、ロード・ウォリアーズのホークと知り合いだってことを自慢したい連中ばかりなのよ。アンタが死んだとき、ほんとうに悲しんでくれる人なんていると思う?」とホークをののしった。
ホークもいろいろな罵詈雑言で反撃したけれど、「アンタには友だちって呼べる人がひとりだっているの?」という前夫人のコトバがずっと耳の奥のほうに残っている。
ホークとくらべると、相棒のアニマルはすべての面でわりと要領がいい。ハイスクールを出てすぐに1回めの結婚をして、長男が誕生したあとに離婚。
ロード・ウォリアーズに変身してから3年後に再婚したのちに長男の養育費を手にし、ふたりめの夫人とのあいだにできた長女、次男と親子5人で仲よく暮らしている。そして、たまにガールフレンドもつくっちゃうのである。
アニマルの弟ジョニー・エースは、学生時代から交際していたガールフレンドと結婚した。プロレスラーになるずっとまえからの付き合いだから、家ではいっさい仕事のはなしをしないし、奥さんのほうもエースがいつから日本に行って、何週間くらいいなくて、いつ家に帰ってくるのかということ以外、なにも聞かない。
おそらく、エースは自分の容姿に無頓着なところがあるのだろう。だから、ツアー中のありとあらゆる誘惑は、ジョン・ローリナイティスの目には奇異なものに映る。エースがどことなくプロレスラーらしくないのは、彼がフツーすぎるくらいフツーの結婚をしているからだろう。
けっきょく、フツーの幸せをフツーにつかむことがいちばんむずかしいのかもしれない。(つづく)
※文中敬称略
※この連載は月~金で毎日更新されます
文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
1
2
⇒連載第1話はコチラ
※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス読本」と書いたうえで、お送りください。
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ