関西最大の渋滞ポイント解消に向け年末開通を目指す「新名神 高槻JCT-神戸JCT間 有馬川橋」の工事現場を訪れる
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
2016年4月22日、神戸市北区・新名神高速道路有馬川橋の工事現場で、長さ約124m、重量約1350トンの鋼鉄製の橋桁の西側が約15m下の国道176号に落下、作業員10名が死傷する大きな事故が発生した。
そのニュースを聞いた時、10名死傷という痛ましさと当時に私の脳裏をよぎったのは、「これで新名神 高槻JCT-神戸JCT間(41km)の開通が、1年は遅れてしまうな」という予測だった。
事故から約3か月後の昨年8月。事業者のNEXCO西日本は、当該区間の全面開通予定を、1年遅れの2017年度末にすると修正した。
関西最大の渋滞ポイントと言えば、中国道・宝塚トンネルだ。ここは日本最大の渋滞ポイントである東名高速・大和トンネルと同様、上下線ともに緩い上り坂になっており、そこに短いトンネルの減速効果が重なって、週末ごとに激しい渋滞が起きている。
また、ここは日本を東西方向に貫く物流の大幹線でありながら、中国道1本が頼り。おかげで阪神淡路大震災によって中国道が通行止めになった際は、代替路がなくトラック輸送が大変な支障をきたした。
そういった課題を一気に解決すると期待されるのが、新名神 高槻-神戸間の開通だ。
事故前、この区間は2016年度中(今年3月まで)の開通を目指していたので、予定通り進めば今年のGWには関西最大の渋滞ポイントが解消されるはずだった。
その事故現場を、今回この目で見ることができた。
工事は、工法を見直し安全対策を実施したうえで昨年8月に再開され、落下した橋桁を撤去。新たな橋桁が設置中だった。
事故で開通が1年遅れたとは言え、実はこの区間の完成予定は、協定上は2018年度末となっている。つまり、1年遅れでも期限より1年前倒しなのだ。NEXCO西日本の新名神全線開通に対する並々ならぬ意欲を感じるし、実際この区間は、日本の物流の安全保障にとって極めて重要。一日も早く開通させてもらいたい。
高速道路は、開通してしまえば通過するのみで、どこに何があるか、何があったかを意識する人はほとんどいない。こうして、大きな事故が起きた現場を下道から見上げ、犠牲者のご冥福を祈りつつ脳裏に刻むのは、高速道路マニアにとって忘れがたい思い出となった。
新名神の残る重要区間である四日市JCT-亀山西JCT間も、工事は順調に進んでいる。深い谷に位置する亀山西JCTが、空中楼閣のごとく組みあがりつつある様を見て、なんとも言えない感慨に襲われた。
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日本の地形は実に険しい。そのうえ世界一の地震国だ。この国に高速道路網を構築することの困難に思いを致さずにはいられない。
この区間は、現在すでに四日市-菰野間が開通済みだが、残る菰野-亀山西JCT間(15km)も、2018年度中つまり約2年後には開通の予定となっている。これによって、東名阪・鈴鹿インター付近の恒常的渋滞が解消される。
つまり、東京-神戸間の高速道路に残される大きな渋滞ポイントは、東名・大和トンネルおよび名神の大津-京都間のみとなる。あと2年間の辛抱だ。
なお大津-京都間の渋滞は、7年後に新名神が開通すれば完全に解消されるはず。大和トンネルも2020年の東京オリンピック前を目指して拡幅工事中だが、こちらは渋滞緩和程度にとどまるだろう。
取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト)
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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