非雪国の人に教えたい「雪道運転でもっとも大事なこと」は四駆でもブリザックでもない
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
青森県五所川原市金木町出身の『週刊SPA!』担当Kが、愛車のシトロエンC5(FF、前輪駆動のこと)のタイヤをスタッドレスに交換したという。銘柄はなんとピレリ!
日本はベタ雪が多く、それが夜間冷え固まってツルツルのアイスバーンになる。それをスタッドレス車が磨いてミラーバーンに。スケートリンク以上に滑るという、世界的にも特殊な環境だ。
ゆえに、「スタッドレスタイヤは国産メーカー、特にアイスバーンに強いブリヂストンのブリザックが最強」というのは、ほとんど都市でん、じゃなかった田舎伝説と化している。
なのに、青森県出身者がよりによってピレリを選ぶとは! 東京都新宿区出身の私(2018年よりMJブロンディから永福ランプに改名)と緊急対談を行った。
永福ランプ(以下、永福):冬も青森にクルマで帰省するんでしょ?
担当K(以下K):青森には帰りませんけど、新潟県とか長野県にスキーに行きますよ。
永福:ピレリで大丈夫なの?
K:清水さん(永福ランプのことです)だって、以前アクア(FF)にピレリを履かせてたじゃないですか!
永福:オレは太平洋側の住人だから。最低限の雪上性能があればいい。ピレリのスタッドレスなら、アルミホイール付き15インチで4本5万円弱だったんだ。ブリヂストン(BS)の半値ちょいだよ!
K:僕はタイヤのみですけど、17インチが4本で5万円! BSだと10万円オーバーでした。
永福:ピレリ安いよね! さすがにアジアンタイヤまで落ちると不安だけど、一応世界の一流メーカーじゃない。でも地元の青森じゃ、タイヤ選びは命にかかわるんでしょ? 確かキミの父上は「死んでもスタッドレスはBSを履け!」って言ってたんじゃ……。
K:言ってました。もはや信仰ですね。冬の北海道に行った際、現地でクルマのタイヤを100台ぐらい確認しましたけど、8割以上がBS装着車でしたし。
永福:なのにキミはピレリを選んだの?
K:世間的には、「BSとピレリのスタッドレスの性能はぜんぜん違う!」かのような空気がありますが、ピレリヘビーユーザーとしては、そんなことはないと思ってます。
永福:いや~、かなり違うでしょ。
K:厳密なデータを取れば差はあるのでしょうが、メーカー広報車などのBSで雪道を走った自分の体感では、言われているほどの大きな差じゃないです。高いエンジンオイルと安いエンジンオイルの差が、あまりわからないのと同じです。
永福:アイスバーンではぜんぜん違うと思うけど……。
K:いや、アイスバーンだと、AWD(4WD、四駆のこと)車にBSを履かせたって、カーブではちょっとスピードが出過ぎただけで、あっという間に対抗車線に膨らみますから。雪道、特にアイスバーンの怖さを知らずに、AWD+BSだから安心と過信しているほうが危険ですよ! 現に、かつてアウディA4クワトロ(AWD)に乗っていた際、BSを履かせてこれで安心と思ってましたが、それで青森に帰省した際は、イメージと違って怖い思いもしましたし。
永福:はあ……。
K:過去4シーズンは、人生で初めてFR(後輪駆動)のBMWにピレリを履かせて、雪道は怖いなーと思いながらスキーに行ってましたけど、普段以上に安全マージンをとって走れば問題ありませんでしたね。AWD+BSで過信するよりも、よほど安全だと思います!
永福:まあ昔から、スキー場への雪道で引っ繰り返ってるのはAWD車が多いとは言うよね。でも、やっぱピレリで雪国に行くと周囲のクルマについていけなくて、大汗かくんだよね……。
K:それはわかります。僕もBMW+ピレリでスキーに行って、坂道でレガシィ(AWD)に猛烈にアオられましたけど、慌てず動ぜず、エスケープゾーンまで安全にゆっくり走りました。命かかってますから!
永福:そりゃ、まあ……。
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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