「首都高の料金が、2022年4月から、最大1950円に大幅値上げ!?」というニュースが駆け巡っている。いったいどういうことなのか? 首都高研究家の清水草一が、週刊SPA!担当Kにわかりやすく説明を試みた。
首都高の上限が1950円に値上げってなんで?
担当K なぜ今さら首都高が大幅値上げするんですか?
清水 今回の改定案については、今はまだご意見(パブリックコメント)を募集中の段階で、正式には決まっていないけど、このままだと、35.7kmを超える首都高の長距離利用は現在より値上げになるね。
担当K それにしても、1320円⇒1950円へ値上げって、値上げ幅がデカすぎませんか?
清水 デカいと言えばデカいんだけど、もともと首都高の料金は、上限1320円じゃ安すぎたという事情がある。例えば首都高最長のさいたま見沼(さいたま市)-幸浦(横浜市)間は87.3kmあるのに、1320円で行けるでしょ。この距離は、東名の東京-御殿場間の83.7kmより長いんだよ。

首都高出入口マップ(「首都高のミカタ」より)
担当K まさか! そんなにあるんですか!
清水 東京-御殿場間は2620円。つまり、首都高はその半額っていう計算だ。
担当K 東京に住んで20年以上なのに、それは知りませんでした……。

首都高の値上げ案。「首都圏の新たな高速道路料金の具体案について」より
忘れてたけど2012年まで首都高東京圏は700円だった!
清水 2012年に距離別料金に移行するまで、首都高は3料金圏制だった。そのときは、さいたま圏400円、東京圏700円、神奈川圏600円で、全区間縦断すると1700円だったんだよ。みんなもう忘れてると思うけど。
担当K すっかり忘れてました。
清水 つまり上限1700円だったのが、2011年に距離別に移行して、上限料金が一気に900円に下げられてしまった。これだと、外環道や圏央道を迂回するより、首都高を突っ切ったほうが全然安くなってしまうという弊害がある。
担当K そのぶん首都高が混むわけですね。
清水 そのころは、まだ外環道も圏央道もあんまりできてなかったから、実害はなかったんだけど、首都高の渋滞を減らすためには、首都高の上限料金はある程度高くないといけない。できれば1700円以上。最低1200円だろうと俺は考えていた。ところが、当時の猪瀬都知事が「民営化したのに料金値上げはまずいだろう」と言って、上限を900円に抑えてしまった。

昨年の緊急事態宣言解除後、混雑する週末の川崎浮島JCTの様子。料金値上げで、こうした渋滞は緩和されるの?
担当K 猪瀬さんは民営化の立役者ですからね。
清水 あのときオレは逆に「このままだとまずい!」と強い危機感を抱いたわけだ。「これじゃ外環道や圏央道ができても、首都高の渋滞が緩和されない!」と。
担当K でも、あのときも値上げだ値上げだって騒がれてませんでした? 上限が700円⇒900円になるって。
清水 大マスコミは全体を見ずに、粗探しばっかりやるからね。オレの見立ては逆だった。でも、その状況は2016年の料金改定で見事に是正された。圏央道の開通に合わせる形で、首都高の料金が300円~1300円へと幅広くなって(現在は消費税値上げで300円~1320円)、しかも圏央道の内側に関しては、どのルートを通っても同じ料金が適用されることになった。これは実に革命的なことで、おかげで非常に迂回が促進された。同時期に首都高C2も全線開通したから、首都高の渋滞は劇的に緩和されたわけだ。

2015年の『週刊SPA!』対談にて猪瀬さんと