『タモリ倶楽部』にいかが? マニアだけが知っている「高速道路開通前めぐり」の秘かな楽しみ方
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
鉄道趣味には、「廃線めぐり」という種目がある。廃止された路線の痕跡を求めて歩くという高尚な趣味で、私も何度か試みたことがあるが、実は高速道路趣味(?)にも、似たような種目がある。それが「開通前めぐり」だ。
鉄道は、地方に行けば廃線だらけだで新規開通は滅多にない。逆に高速道路にはまだ廃線がなく、新規開通が続いているから、自然こうなる。
鉄道の廃線めぐりは寂寥感に満ちているが、高速道路の開通前めぐりはダイナミックだ。なにせ鉄道とは太さ(幅)が違う。4車線でも全幅約25m前後ある。巨大な構築物が、地形をすべて乗り越えてドカーンと造られつつある様は実に壮観だ。それでいて、開通前路線がどこを通るかを知っているのは、地元の人や私のようなマニアなどごく一部に限られる。つまり、秘かな愉しみの要素も濃い。
今回私は、建設中の新名神・亀山西JCTから鈴鹿PAにかけて(三重県)巡ってみた。
亀山西JCTは、山深い谷間にある。新名神を走っていると、谷底から天を衝くようなクレーンが伸び、「こんなところにJCTを造るのか!」と感動していたが、高速道路マニアなら、ここを下から眺めてみたいと思うのが自然だろう。
亀山ICから、伝説のシャープ亀山工場の脇を抜け、安楽川に沿ってのどかな道を上って行くと、突如行く手に新名神の橋梁「安楽川橋」が現れる。亀山西JCTは、この橋の中央部から北東へ分岐する形を取る。
近辺は絵に描いたような山村。素朴な屋根のバス停、その脇には桜が今にも満開になろうとしていた。建設中の巨大建造物とニッポンの原風景とのコントラストが、開通前路線巡りの醍醐味のひとつだ。
亀山西JCTの下から上を眺める。中央の太い部分が新名神の本線となるべく建設中で、分岐後すぐにトンネル(野登トンネル)に突入している。新名神は山も谷も踏みつぶすようにして進むため、開通後に走っても周辺の地形を実感することは難しいが、下から眺めると、そのダイナミックさが実感できる。
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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