カーライフ

20年前、片道4000円で超ガラガラだった東京湾アクアラインは800円になってこうなった

~不定期連載「あの日、あの道、そしていま」~

 東京湾アクアラインは、クルマ好きにとっては特別な道だ。約10kmの海底トンネルと約5kmの海上橋梁、合計15kmはすべて直線。15kmの直線という点だけを見ても、世界的にかなり珍しい。途中の人工島「海ほたる」からは、東京湾の中央からの絶景が望める。海ほたるPAは世界唯一の海上パーキングエリアで、観光資源としての価値も高い。世界に誇る日本の財産と言ってもいいだろう。
東京湾アクアラインは800円になってこうなった

世界に一つだけの海上パーキングエリア「海ほたるPA」

 このアクアラインが、昨年末、開通20周年を迎えた。  現在は1日平均4万6000台のクルマが走り、週末ごとに渋滞するアクアラインだが、20年前は片道4000円という超高額料金ゆえに、無人の野を往くが如しであった。おかげでアクアラインは、非日常のサイバーパンク空間となった。直線が続いて眠くなるどころか、クルマ好きは大いに興奮し、目玉ギンギン状態でガラガラの海底トンネルを突っ走ったものである。  クルマ好きとしては「たまの天国」だった東京湾アクアラインだが、開通当初から、その建設収支は大問題だった。  東京湾アクアラインは、日本道路公団(当時。現在はNEXCO3社に分割民営化)の全国プール制ではなく、単独の有料道路として建設された。つまり30年間の料金徴収により、単体で1兆4400億円の建設費を償還する必要があった。そこで日本道路公団がはじき出した料金は、普通車で片道5050円という、想像を絶するものだった。
IKE_2896s(09年)

東京湾アクアラインを爆走して歓喜するのカーマニア

 これに噛み付いたのが、亀井静香建設大臣(当時)だ。「それは高すぎる」という鶴の一声で、返済期間を30年から40年に延ばし、4000円への値下げが決定された。それでも十分すぎるほど高かったが。  これほど高い料金でも、開通当初で1日2万5000台、最終的には1日5万3000台のクルマが利用するという予測がなされていたのだから、恐れ入る。  当時の建設省や日本道路公団には、コスト意識というものが決定的に欠如していた。初めに建設ありきで、償還計画は後付けの数字合わせに過ぎなかったのだ。  ところで、この15kmに1兆4400億円という建設費は、首都高の中央環状新宿線の「11kmに1兆2000億円」という建設単価に極めて近い。つまり山手トンネルを単独採算性にした場合、料金は「大橋JCT‐熊野町JCT間で3000円程度」という計算も成り立つことになる。  世の中にはスジ論というものがある。高速道路に関しては、「タダになるはずじゃなかったのか!」というスジ論がある。昔完成した路線(例/東名や首都高都心環状線など)はもう借金も返済し終えているのだから、先にタダにしろという理論だ。  それはそれでスジだが、そうすると山手トンネルのような建設単価の高い路線は絶対に造れなくなり、渋滞は永遠に放置となる。東京湾アクアラインの「片道4000円」は、料金だけをクローズアップすればそのひな形だ。スジ論もまた、社会の実情を無視した暴論なのである。
東京湾アクアラインは800円になってこうなった

「海ほたるPA」から見た東京湾アクアライン

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片道4000円で発進した東京湾アクアライン、実際の交通量はどうだったか。
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