「サークル内交際⇒卒業後結婚」は“神”扱い。80年代テニサー論
まだ、大学生の間ではそこそこ安定した人気をキープしつづけている「テニサー」だが、80年代初頭あたりの「テニスサークル」は、今とは比べものにならないほど熱く、まさに「猫も杓子も状態」の大ブームであった。
テニスサークルとは、読んで字のごとく「テニスに興じるサークル」のことである。「体育会」ではなく「同好会」ゆえ、「あまりテニスを一所懸命やりすぎない」のが暗黙の了解とされていた。ちなみにあのころは「テニス同好会」と呼ばれることのほうが多く、「テニサー」なる略称もなかった。
「大学公認で、入会できるのは学内生のみ。しかもテニスの腕前は体育会クラス」という硬派めなサークルから、「インカレ(=どこの大学に通っているかを不問とすること)を謳いつつほかの女子大・短大から積極的にメンバーを集い、主な活動内容は飲み会。テニスは月に一度ほどたしなむだけ」というド軟派なサークルまで「テニス:遊び」の比率こそさまざまだったが、「遊び」が「ゼロ」になることだけは絶対にあり得なかった。開き直って「オールシーズンスポーツ」(野球、サッカー、ラグビー、陸上競技、格闘技とかは「オール」に含まれなかった)などと、あえてメイン種目を曖昧に濁すサークルが出はじめたのも、ちょうどこのころだった。
すでに「バブルへの予兆」が肌感としてひしひしと伝わってくる、しかも日本中が「終身雇用」を微塵とも疑っていなかった時代である。ほとんどの大学生にとって、過酷な受験戦争をかいくぐって勝ち得た4年間は、「それなりの企業に入社して一生働き続ける」までのつかの間の休息期間だったのだ。おそらく「戦後史上、もっとも学業をおろそかにしていた世代」なのではなかろうか。
そんな安穏としたモラトリアムを、泥臭くないかたちでフワッと埋めてくれたのがテニスサークルだった。
一説によると、当時は有象無象をあわせれば、一大学に軽く200や300ものサークルがあったらしい。まるで「CIA」や「KGB」のごとくつっけんどんなアルファベッド羅列系や、「テニス友の会」的な直球&親近感系、「くりにゃんく~る」みたいなペンション系、「湘南庭球會」風な暴走族系まで。入学式には百花繚乱のサークル名が掲載されたビラが門前で巻かれ、それを手にした中学、高校と脇目もふらずガリ勉あるいは部活に勤しんできたウブな新入生たちは、洒落た洋服を買い、髪を伸ばして心機一転を図り、各々の個性と希望遊び比率にフィットするサークルの門を夢見がちに叩いていた。

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大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
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