ウルフパックが伝説をつくります――フミ斎藤のプロレス読本#102【ショーン・ウォルトマン編エピソード2】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
チーム名は“ウルフパックWolf Pac”。メンバーはケビン・ナッシュ、スコット・ホール、ショーン・ウォルトマンの3人。WWEにいたころは“ビッグ・ダディ・クール”ディーゼル、“バッドガイ”レーザー・ラモン、1-2-3キッドと名乗っていた。
それぞれがぞれぞれの理由でニューヨークを離れ、しばらくしてから別の場所で再会した。どこのリングに上がることになってもこれからは3人でいっしょにやっていこうと約束した。
ウルフパックのウルフは、人さし指と小指を立てて、中指と薬指を親指の腹にあててつくるオオカミの指サイン。日本では、古くから影絵でキツネを表現するときに用いられているあの形である。
イスタンブールでは、このポーズがギャング(マフィア)を意味するサイン・ランゲージに使われているらしい。ウルフパックの3人は、トルコの首都アンカラでナイトクラブの支配人からこの変てこな手つきとその意味を教わった。
WWEをおん出た瞬間から、この世にディーゼルもレーザー・ラモンもいなくなった。1-2-3キッドももう消えてなくなる。3人が3人ともそれは仕方ないことと考えている。
リングネームなんてバンド名のようなものだ。何度となく変わったり変えられたりしても、おぼえていてくれる人たちはおぼえていてくれるし、どうでいいバンドだったら、だれもはじめから気にもしない。ウルフパックは、ウルフパックをメジャーにしようとたくらんでいる。
ナッシュとホールとショーンがやりたいのは本格的なトリオである。アメリカではファビュラス・フリーバーズ(マイケル・ヘイズ&テリー・ゴーディ&バディ・ロバーツ)以来、3人組のスーパースターは現れていない。
束でもスーパースター、バラでもスーパースター。ロック・ミュージックでいえば1970年代に一世を風びしたCSNY(クロズビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)のようなタッグチーム。理想はそのあたりのポジションに設定してある。
「アメリカにもうちょっとテリトリーがあったらなあ」とショーンはつぶやく。ホールとショーンは根っからのプロレス少年で、ナッシュは後天的なプロレスラー。
38歳のホールは子どものころはジャック・ブリスコやテリー・ファンクに夢中になり、24歳のショーンはハルク・ホーガンを観て育った。ナッシュは、アトランタのバーでバウンサー(用心棒)として働いていたときにWCWのエグゼクティブにスカウトされ、レスリング・ビジネスの世界に入った。
アメリカにもっとたくさんのレスリング・カンパニーがあったら、ウルフパックはどこへだって飛んでいってライヴをおっぱじめるだろう。
父親が軍人だったホールは、少年時代は3年にいちどくらいのペースで引っ越しを経験し、新しい駐屯地で暮らすたびにその土地、その土地のプロレスに触れた。
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