アジアの片隅で少女たちの古着を拾い集める男の人生~日本を棄てた日本人~
そんなプノンペンの古着市場に精通するM浦のヘビロテは「デザインがNY的だし、アメリカ帰りっぽくてカッコいいでしょ?」というニューヨーク州立大学の学食スタッフシャツと、世界の大学ランキングで東大を上回る高偏差値の名門校、着るだけで高偏差値の優越感が味わえる「香港理工大Tシャツ」の二枚。
「あとね。マメにチェックしてると、こんなものも手に入るんだ」
私の反応に気を良くしたのか、ひととおり戦利品を披露したM浦が、いつもの彼らしくない興奮の面持ちで、大きなずた袋の底から「さらにもう一段踏み込んだ」コレクションを引っぱりだした。
それは、不人気色や不人気デザインを中心とした大量の女性用水着……。
「ふふっ、こういうティーン向けの水着なんかも、あるとつい買っちゃうんだ。これを捨てた女のコたちも、まさか自分の水着が遠く離れたアジアの国で、僕みたいなのにサルベージされてるなんて、夢にも思わないだろうね」
捨てる神あれば拾う神あり。私は「そろそろ帰国したほうがいいよ」とアドバイスして、M浦の部屋を後にした。
【クーロン黒沢】
東京生まれ。90年代からアジア(香港・タイ・カンボジアなど)、洋ゲー、電話、サバイバル、エネマグラ等、ノンジャンルで執筆。強盗・空き巣被害それぞれ一回、火事・交通事故(轢き逃げされた)各一回、その他、様々なトラブルを経験した危機管理のプロ。現在は人生再インストールマガジン『シックスサマナ』発行人。同名のポッドキャストも放送中。
<取材・撮影・文/クーロン黒沢>
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