経済成長が進むベトナム…それでも娼婦やマリファナが行き交う「ブイビエン通り」の夜
娼婦を斡旋するために自転車で走る回る男。路上に立ち行き交う男に声をかけ春をひさぐ娼婦。木箱にタバコを詰め込み、それらと共にマリファナを売る老女。
私はとあるパブに座り、シーシャを吸いながら、あらゆる者たちが行き来する“ブイビエン通り”をぼんやりと眺めていた。
かつてアジアの発展途上国のなかには、無法地帯と呼べる場所も少なくなかったが、経済成長が進むにつれて、そのような混沌とした姿は見られなくなった。しかし、これは大昔の話ではなく、現在の話である。
ベトナム・ホーチミンのブイビエン通りは、いわゆる“バックパッカー街”だが、ここには旅人だけではなく、違法合法を含めた多種多様な者たちが集まり、渦まいている。今回はその様子をリポートしたい。
ホーチミン市街地の中心部に東西600メートルほど伸びるブイビエン通り。通り沿いや周辺に安宿が密集していることから、バックパッカーたちがこの界隈で定宿を探すようになり、それにあわせ通りも賑わうようになった。
バンコクのカオサン通りもバックパッカーが多く、こちらは“バックパッカーの聖地”とまで呼ばれ認知度は高いが、ホーチミンのブイビエン通りはそこまで知られた存在ではないだろう。しかし賑わいはカオサン通りに負けてはいない。低い椅子を路上に置くベトナム料理の食堂、日が暮れると爆音を鳴らすパブの数々、味はたいしたことないが雰囲気で食わせる洒落たレストラン、不健全な店も含めたマッサージ店、それらの合間に建つゲストハウス。
日中はさほど人通りもなく歩きやすいが、次第に日が暮れていくと、ネオン、喧騒、酒、シーシャ、娼婦、マリファナを求め人々で溢れ始めていくのだ。
通りを歩く外国人男性は、娼婦を斡旋する男に声をかけられるのが常である。興味がありそうな男だと見破ると、周辺で待機している女に連絡を取り集め、路上の一角に並ばせて客が選ぶという流れだ。
深夜、私はブイビエン通りのあるパブでシーシャを吸っていると、インド系の男に声をかけた斡旋野郎が、スマホで女を呼び集めている姿を目撃した。5人ほど集まったベトナム人女性は、なかなかの容姿をした女たちである。ブイビエン通りの裏風俗はそれだけではない。
斡旋方式の他に、娼婦が通りに立ち、直接男に声をかけて売春している女もいる。いわゆる立ちんぼだ。
数年前までホーチミン裏風俗の代名詞的だった「ホンダガール(編注※バイクで街を流しつつ、客引きをする売春婦。ベトナムでは、バイクといえばホンダだった)」は激減し、男による斡旋か、立ちんぼに変わってきているようだ。
路上デリヘルを肴にシーシャを吸っている私に、一人の老女が声をかけてきた。各種タバコを木箱に入れて売り歩く商人である。幾多もあるタバコの箱から一つだけを取り出し、私にこういった。
「マリファナは要らんか?」
彼女が手に取ったタバコと変わらぬサイズの箱には乾燥大麻が仕込まれている。賑やかな通りでマリファナを売る老女の姿は、東南アジアならさもありなんといった光景かもしれないが、ベトナムでもマリファナは違法である。値段を聞くと50万ドン(約2500円)だという。何グラム入っているのかは知らない。
私はマリファナを買う気はないが「高い」といってはね付けると、一瞬にして「30万ドン」まで値下がった。
それでも「要らない」と告げると、老女は早々に撤退し近くの客へ近づき、ふたたびタバコと違法の葉っぱの営業に励み始める。マリファナはベトナムでも違法と書いたが、老女は平然と売っているし、パブに座ったら隣の席からマリファナの香りが鼻腔をくすぐったのは一度だけではない。
通りの所々で警官が立ち、ときおり外国人に職務質問している姿を見かけたが、それでも娼婦は堂々と春を売り、パブの隣席ではイケない葉っぱが小さな炎を上げ薫りを振りまいているのだ。
バックパッカーが安宿を求めて集まるブイビエン通り
通りに立つ娼婦、マリファナを売り歩く老女
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2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
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