“アブナイ男”カクタス・ジャックのクレージー・バンプ――フミ斎藤のプロレス読本#110【ECW編エピソード02】
少年時代、実家のベースメントで息を殺してみつめていたビデオの画面には“スーパーフライ”ジミー・スヌーカのスーパーフライが映っていた。
カクタスがどうしてもプロレスラーになりたかったのは、高いところから飛び降りてみたくてしようがなかったからだった。リング屋さんの手伝いをしていたころからクレージー・バンプの練習ばかりやっていた。
もちろん、流血だってへっちゃらだ。バンプのクッションになってくれるヒップと背中にはたっぷりと肉をつけておかなければならない。気がついたときにはけっこうな巨漢タイプになっていた。
テネシー、ダラス、アラバマと流れていくうちにWCWからスカウトの手が伸びてきた。クレージー・バンプがそれなりに評判になって“ビーチ・ブラスト”“ハロウィン・ヘイボック”といった大舞台ではスティングやベイダーを相手にテキサス・デスマッチをやらされた。
お客さんを喜ばせようと思って、硬いコンクリートのフロアでお得意のクレージー・バンプをとりつづけたけれど、カクタスはWCWのリングではハッピーになれなかった。専属契約を交わし、それなりの年俸をもらっていたが、あの息苦しい空間にはどうしてもいたくなかった。
クレージー・バンプにはちいさなライブの温度が似合う。“アブナイ男”カクタス・ジャックは、そこにいることのフィーリングを共有できて、痛みを感じてくれる観客のまえでだけバンプをとる。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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