スポーツ

プロレス用語“インディペンデント”の定義――フミ斎藤のプロレス読本#126【ECW編エピソード18】

 大仁田にとっては、ジャイアント馬場さんのいないところで勝手にプロレスをやっちゃうことがインディペンデントだったのだろう。  大仁田自身がFMWをインディペンデントと位置づけたことで、FMWよりもあとから誕生した団体群はほとんど自動的にインディー系とカテゴライズされることになった。“昭和のプロレス”はジャイアント馬場とアントニオ猪木のモノポリーだった。  NWA、AWA、WWEの3組織が共存した1970年代までのアメリカのレスリング・ビジネスの勢力分布図とは単純に比較することはできないけれど、ポール・ヘイメンもECWサポーターも、ECWをいわゆるインディペンデント団体というふうにはとらえていなかった。  どうやら、インディペンデント=イコール=ちょっとマイナーな団体、という漠然とした理解のようものはもう時代遅れになってしまったようだ。  全国ネットワーク系の民放テレビ(地上波)で毎週、試合が観られるのがメジャーで(新日本プロレスと全日本プロレス)で、活字メディアを通してその情報が読者(ファン)に伝達されるのがインディー団体という認識もすでに正確ではなくなっている。  プロレスは、プロレスのほうでもまだよくわからないうちに衛星デジタル多チャンネル時代に足を踏み入れていた。ハードウェア(テクノロジー)がソフトウェア(人間がやるプロレスとその映像)を追いかけてきた。  もちろん、1990年代にはインターネットの画面のなかでフツーに動画が観られる時代がやがてやって来るという発想はまだなかった。  これからは大きいプロレスも、ちいさいプロレスも、遠いプロレスも、近いプロレスもすべてリアルタイムで映像化され、世界じゅうに同時発信される。ソフトがハードを生み、ハードがソフトをつくりだす。  21世紀のプロレスは、地球からいったん宇宙に飛び出して、人工衛星にぶつかってからみんなの家のベランダのお皿にはね返ってくる。そのプロレスがおもしろいか、おもしろくないかを判断するのはそれを観るひとりひとりの感性ということになる。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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⇒連載第1話はコチラ

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