きっかけは東日本大震災。90年代パンクブームが’10年代に復活した理由
’12年の9月には当初の計画通り東北での「AIR JAM」が開催された。ハスキング・ビーやKEMURI(’95年結成のスカパンクバンド。’07年に解散)など活動をやめていたバンドもここで復活し、会場にはかつては見られなかった家族連れのファンも多数。ハイスタが当時と変わらぬ音を鳴らすなか、再び笑顔のサークルモッシュが巻き起こっていた。
ブラフマンが結成20周年を迎えた’15年、幕張メッセでの記念イベント「尽未来祭」では、スキャフル・キングやバック・ドロップ・ボムなどの仲間たちが集まり、スーパー・ステューピッドも一夜限りの復活を遂げるなど’90年代パンクの同窓会のような様相を呈していた。かと思えばイベントの2日目は、SiM、マン・ウィズ・ア・ミッションなど’10年代以降に台頭したバンドたちが集合。世代を超えた連帯は脈々と続いている。
そして、今最も若者に人気のあるパンクバンドといえば、ピザ・オブ・デスから登場したWANIMAだろう。ファースト・アルバムの中で彼らはこう歌っている。
「今は立派な君のパパも一度は聴いてたんだハイ・スタンダード」
そのハイスタは昨年にシングルを、そして10月4日には17年ぶりのオリジナルアルバム『ザ・ギフト』をリリース。初週売り上げが12.2万枚という、現代のロックバンドとしては出色のセールスを記録している。復活はありえないと思われた3人が動きだし、それを見て当時の思いを取り戻す、かつてキッズと呼ばれた中年層たち。親子二世代を巻き込んで、’90年代パンクの夢は続いていく。
<知らない人はまずここから!! ’10年代アルバム3選>
●ブラフマン 『超克』
’90年代後半から第一線を走り続けている4人組の目下最新アルバム。震災後の怒りも悲しみものみ込んだ音の説得力が違う
●WANIMA 『Are You Coming?』
’14年にデビューし、一瞬でシーンのトップに上り詰めた恐るべき3人組。’90年代から続くパンクの魅力を最新型に進化させた
●ハイ・スタンダード 『The Gift』
18年ぶりのオリジナル・フルアルバム。ハイスタらしい明るさや勢いはそのままだが、大人になった今だから歌える曲も多数
【東北ライブハウス大作戦】
震災後、PAチーム「SPC peak performance」代表の西片明人氏が中心になり行われた被災地にライブハウスを作る活動。多くのミュージシャンも参画した。写真は石巻ブルーレジスタンスでのブラフマンのライブ
取材・文/石井恵梨子 秋山純一郎(本誌)
― あの[’90年代パンクブーム]に舞え! ―
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