更新日:2017年11月12日 10:48
スポーツ

“関節技の鬼”藤原喜明「プロレスはセックスみたいなもの。裸のつき合いは深い」――最強レスラー数珠つなぎvol.15

――佐山サトルさんもフロリダに行って、組長のアパートに居候したそうですね。佐山さんとの生活はいかがでしたか。 藤原:俺がフロリダに行って1か月か2か月くらいしてから、佐山もメキシコから来たんだよね。ゲッソリ痩せてな。あいつ上手いんだよ、持ち上げるの。「藤原さんのカレーライス食いたいな~。藤原さん、料理うまいからな~」とか言われると、「そうか? じゃあ、作ってやろうか」ってなるじゃん。「今日は肉食いたいな~。藤原さんのステーキ、うまいからな~」とかさ。結局あいつ、一回も作ったことねえよ(笑)。  関節技って、一対一だと、教えるのが難しいんだよね。「こうやるんだ」って言ったって、見えないだろ? だから、二人いたほうが分かりやすいんだよ。俺と佐山でやりながら、ゴッチさんが「ここちょっと違う」とか指導してくれて。けど、佐山とスパーリングしてて、俺が足首を押さえてバキバキっとやっちゃったんだよ。そしたらゴッチさん、「お前ら、ピットブルみたいな奴らだな」って。要するに、喧嘩っ早いというか、無茶苦茶だっていうかさ。それからはもう、スパーリングはやらせてくれなかったな。 “関節技の鬼”藤原喜明の素顔――ゴッチさんはどんな方でしたか。 藤原:朝から晩まで、レスリングとコンディショニングのことしか考えてない人だよ。話もそればっかりだもんな。あれで人生楽しかったのかなあ? と思うんだけどね。動物園が好きでね。虎はなぜ強いのか、ジーッと見てるらしいよ。背伸びしてあくびなんかすると、「これだ!」って言って、プッシュアップの動きに取り入れたりとかな。虎はなぜ強いのかって、あれは生まれつき強いと思うんだよな(笑)。けど、あくまで「なぜ強いのか?」なんだよ。それに本をよく読んでて、哲学者みたいなことを言うんだ。カッコよかったよ。 ――どんなところがカッコよかった? 藤原:臼田勝美が、ゴッチさんと銭湯に行ったらしいんだよ。臼田が後ろから付いてったらよ、ゴッチさんが「なんで後ろ歩くんだい?」って言ったんだって。「先生の前を歩くわけにはいきません」って言ったら、「練習中はお前の先生かもしれないけど、練習が終わったら友だちじゃないか」ってさ。臼田が感動して震えたって言ってた。カッコいいだろ? なかなか言えないよなあ。いまでもこうして話すと、ジーンとくるんだけどさ。 ――組長とゴッチさんの関係、本当に素敵だなと思います。 藤原:俺らって、裸と裸で一緒に汗かいたり、くっついたりしてるわけだよ。ある意味セックスしてるようなもんなんだよな。だから離れていても、普通の友だち以上に、昔の愛人だったような、夫婦だったような、繋がりが深いんだよね。長いトレーニングで一緒に苦しんだり、体と体がくっついたり、汗と汗でビショビショになりながらさ。プロレスラーってそういう関係なんだよ。 “関節技の鬼”藤原喜明の素顔 前田なんかも50過ぎて、もう立派な社長なんだけど、会った瞬間40年前に戻っちゃうんだよ。ニコニコしてな。あの気難しい前田がだよ? 周りの奴らがみんな、ピリピリするんだけど。佐山だってそうだよ。佐山先生って呼ばれてるんだろ? なーにが先生だよ(笑)。まあ、考えてみると立派な先生なんだよな。けど何年かぶりに会っても、毎日会ってるような感覚なんだよね。お互いに認め合ってるしな。ちょっと間抜けだけど、こういうところは天才的だ、頑張ったんだろうなとか、いろいろな。
次のページ right-delta
組長が思う強さとは
1
2
3
4
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko

記事一覧へ
ゴッチ式トレーニング

没後10年「ゴッチの愛弟子、師を語る」


◆「関節技セミナー」
毎月開催中! 詳細は藤原組ブログ(http://fujiwaraf.exblog.jp/)にて。
※次回:11月18日(土)

◆『プロレス/格闘技DX』
http://dx-sp.gsj.bz/view.page/menu/index/?
月額324円(税込)。プロレスの試合結果、イベント情報、レスラーのコラムなど、充実の携帯サイト。藤原喜明は「レスラーズダイアリー」にて、毎週金曜日にコラムを公開中!

おすすめ記事