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『夫のちんぽが入らない』が Yahoo!検索大賞 2017小説部門賞に。賛否両論を乗り越えて…

新聞広告で書名が出せない、ネット配信できない…「夫のちんぽ」が乗り越えた逆境

 とはいえ、タイトルがタイトルだけに、その道のりはかんたんではなかった。担当編集が当時を振り返る。まずは書店に並ぶ際の表紙デザインだ。こだま氏から「ちんぽをバラせ」との命があったという。
「物議を醸しつつもこのタイトルでいくと決めた後、“ちんぽ”の視認性を低くして、せめて書店で手に取ってレジまで持って行きやすいような配慮をすることが読者に対する礼儀かなと。こだまさんと相談しながらデザインを決めました『夫のちんぽが入らない』 さらに書籍の発売直後、新聞広告に書名が出せない事態に。広告の審査規定により、「夫のちんぽ」が“性的な表現”として引っかかり、掲載できなかったのだ。しかし異例とも呼べる「書名なしの新聞広告」が功を奏し、ネットを中心に大きな話題となった。  だが、「夫のちんぽ」の逆境はそれだけではなかった。インターネットにかかわる職業のひとであればご存知かもしれないが、Yahoo!をはじめ、様々なプラットフォームや検索エンジンがあるなかで、いま“性的な表現”に対する厳しい規制が設けられつつある。各種ニュースサイトなどにおいても独自のアルゴリズムが設定されており、“性的な表現”はタイトルの単語レベルで除外されてしまうこともある。 「“ちんぽ”自体は使ってはいけない言葉ではないはずですが、紙やWebを問わず、メディアの自主規制が強まりつつあるのは確かですよね。読者や視聴者からのクレームを回避したいからだと思うのですが。今回の『夫のちんぽが入らない』が小説部門賞に選ばれたことをキッカケに、少しでも柔軟な方に向かえばいいなと思います」  そんな「夫のちんぽ」が様々な逆境を乗り越え、奇しくも「Yahoo!検索大賞 2017」の小説部門賞に選ばれるという大きな結果に結びついた。しかしながら裏を返せば、新聞や雑誌、ネットメディアなど、日に日に強まりつつある表現に対する規制が、今回のような名作を潰しかねないということも示唆しているだろう。  紋切り型の規定やアルゴリズムが、作品の魅力まで推し量ることができるのか。今回はその裏側にいる“人間”の功績が大きかったように思える。果たして、今後はどうなっていくのだろうか。 <取材・文・撮影/藤井敦年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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