報告される医療事故だけで年間3000件以上…「私、失敗しないので。」はあり得ない!
「報道ステーション」のアナウンサーまでもが「続編が待ち遠しい」と漏らすなど、大好評に終わったテレビ朝日系ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」。
米倉涼子が演じる天才外科医・大門未知子の名台詞と言えば「私、失敗しないので。」だ。テレビドラマ上の話ではあるものの、仮にそんなドクターばかりなら医療事故は起こらない。現実はどうなのか。
日本医療機能評価機構が毎年発表している「医療事故情報収集等事業報告書」によれば、2016年の1年間に報告された医療事故数は全国1031の医療機関で過去最多の3882件。その内訳は、医療事故の報告が義務づけられている大学病院などの276医療機関からの報告が全体の8割を超える3428件。
その他、任意で755の医療機関が454件の事故を報告している。つまり、報告義務のある大学病院などの医療機関では年間約12件、ひと月に一回、医療事故が起きているのだ。事故の程度の内訳を見ると、8.2%(281人)が死亡、36.8%(1259人)が障害残存の可能性となっている。
「これは氷山の一角です。医療事故には病院に責任の追及ができないやむを得ない合併症も含みますが、実際はもっと多くの医療事故が起きています」
こう話すのは、医療事件を専門に扱う石黒麻利子弁護士だ。確かに、先述の調査の対象となっている医療機関は276施設に過ぎない。
厚生労働省の医療施設動態調査によれば、全国に医療施設は17万8932施設あり(病院が8439施設、一般診療所が10万1580施設、歯科診療所が6万8913施設)、仮に各医療施設がひと月に一回、医療事故を起こしているとすると、実際は日本医療機能評価機構が発表している数より、遙かに多い数の医療事故が起こっていることになる。どうやら「私、失敗しないので。」というわけではないようだ。
また、石黒弁護士はこんな指摘もする。ドラマ「ドクターX」は日本最高峰の大学病院「東帝大学病院」が舞台になっているが、
「確かに大きな大学病院の方が最先端の医療機器など設備が揃っており、症例数が多いので場数を踏んだ技術のある医師が多く、漠然と大病院の方がいいと思いがちです。しかし、大病院だからと言って医療ミスが少ないとは限りません」
石黒弁護士によれば、医療法律相談で何度も某有名大学病院の医療ミスに関する相談を受けるという。
「大学病院は教育を目的としているため、経験の乏しい医師が手術で失敗するなど医療事故数は比較的多いと言えます。大病院に特有な問題として、その分野の第一人者と認められるために症例数を増やして実績を作りたい医師が、患者に簡単な手術と説明して危険性の高い手術や新しい治療法を実施して事故を起こしてしまうケースがあります」(石黒弁護士)
記憶に新しいのは群馬大学医学部附属病院の腹腔鏡下肝切除術で8人が亡くなった事件だろう。やはり現実はなかなかドラマのようにはいかない。<取材・文/日刊SPA!取材班>
【石黒麻利子(いしぐろ・まりこ)】
弁護士・医学博士。東京都出身。1992年、藤田保健衛生大学大学院医学研究科博士課程修了。理化学研究所などで主に脳神経科学の研究に携わった後、法曹へ転身。2006年中央大学法科大学院修了、同年司法試験合格。著書に『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」』。
大学病院だからこその危険とは?
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『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」』 医療事件を扱う専門弁護士が、医療事故に遭わないための「患者力」、そして、医療紛争の解決法を徹底解説 ![]() |
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