雑学

「公正中立」な報道なんてないのだから――時事芸人・プチ鹿島×評論家・荻上チキ対談



地方紙「東京新聞」が注目される理由


荻上:最近、産経って東京新聞への言及が増えているんですよね。

鹿島:東京新聞が産経おじさんの視界に入ってきて、小言を言わざるをえないという状況になったんでしょうね。東京新聞にとっても、いいことではないでしょうか。

荻上:産経の東京新聞言及率が上がっているのは、2つの理由があると思うんです。1つはネット社会であること。もう1つは安倍政権が続いているから。政権に対する批判を東京新聞中心で盛り上げていくという格好で記事がとりあげることが多くなり、産経と対立することが多くなった。産経は産経で、かなり前からウェブに力を入れていますから。だって、なにをどうしたのかマイクロソフトのニュースのトップページに産経が載るわけです。この総括をマイクロソフトはすべきだと思ってますけど。

鹿島:あれはけっこう若い世代の保守化といいますが、一枚も二枚も噛んでるのではないかと思います。

荻上:産経は2ちゃんのまとめサイト的な、たとえば「民進党またもやブーメラン」的なネットウケするタイトルをつけて、煽ってPVを稼ぎにいくというスタイルを身につけ、ちょうど東京新聞が仮想敵になった。

鹿島:ネット上では東京新聞と産経新聞が仮想敵同士になっていると思うのですが、面白いのが、日刊ゲンダイなんですよ。日刊ゲンダイは完全に会社帰りのおじさんが電車の中で読むために作られた、オヤジジャーナルの中でも屈指の辛口おじさんです。

 僕は「ゲンダイ師匠」と読んでいるんですが、その過激な見出しが、ネットに転載されると意識高い文化人的な様相を見せて、安倍政権どうなの?という人に見事にハマっている。ゲンダイがネットで称賛されているんですよ。あの過激な論調が、「そうだ! よく言ってくれた」と、そのままの形でネットと出会っているというのが面白い。

荻上:東京新聞はまだまだネット戦略が下手ですよね。「特報部」という主力記事をウェブに載せてないわけですから。

鹿島:僕も、あの「特報部」は一日遅れでもいいから出すべきだと思います。そこは東京新聞、まだまだですよね。試行錯誤しているんでしょうけど。

荻上:東京新聞が目指すべきは、「左の産経新聞」なんですけどね(笑)。2018年は東京新聞の逆襲がどう始まるかも注目です。

「東京新聞が目指すべきは、『左の産経新聞』」(荻上)

鹿島:全国紙5紙、東京新聞を入れて6紙があって、何から読むかというと、僕はだいたい産経、東京の端と端から読むんですよ。そのあと、朝日、読売、毎日と真ん中に戻っていく。

荻上:僕は逆ですね。基本的に朝日と読売から読みます。産経と東京を先に読むとわけがわからなくなるので(笑)。

鹿島:最近、僕、毎日新聞を読むのがとても心地いいんです。すごく面白い。

荻上:この本の宣伝をフェイスブックで友達に紹介したときに、「毎日がかわいそう」というコメントがつきました(笑)。帯では読売・朝日・産経に触れているのに、毎日が入ってなくて。

鹿島:ははは。そこが毎日新聞の宿命と言うか。いいところでもあるんですよね。

【プチ鹿島】
スポーツからカルチャー、政治までをウォッチする時事芸人。著書に『芸人式新聞の読み方』(幻冬舎)、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)

【荻上チキ】
評論家、ニュースサイト『シノドス』編集長。ラジオパーソナリティとしても活躍。『すべての新聞は「偏って」いる ホンネと数字のメディア論』(扶桑社)が発売中

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芸人式新聞の読み方

「川口浩探検隊とプロレスでリテラシーを学んだ」と言う時事芸人・プチ鹿島氏が、新聞の楽しみ方を指南する一冊。「この世界は、白黒つかないものばかり。だから、自分の中の正義を疑い、新聞を味わい、人間の営みを楽しむのだ」(本書より)


すべての新聞は「偏って」いる ホンネと数字のメディア論

安保法制や軽減税率など過去の新聞記事を引用しながら、あるいは独自データを用いながら、各メディアの「クセ」を提示。「バイアスのないメディアなど存在しない」という前提に立ち、その「クセ」を詳らかにすることで、分断する社会で溢れる情報とつきあう具体的スキルを提示する。




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