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運転の楽しさを追求しユーザーに忖度!? マツダファン増加の背景にある躍度とは?

 国内外の自動車メーカーのなかでも、ひときわクルマ好き、運転好きがエンジニアとしてたくさん在籍しているマツダ。オープンカーの最多販売記録(ギネス)を持つ「ロードスター」や、小さな高級車「デミオ」の存在は世界で認められ、SUVの「CX-5」や、その兄貴分でサードシートを備える6/7人乗りの「CX-8」の人気も揃って高い。発売間もないCX-8はまだしも、2017年2月に新型(2代目)となったCX-5は年末を迎えてもなお売れ行きは絶好調だ。

マツダのラインナップ

 マツダファンが増えた理由のひとつはズバリ、走りの性能が良いことだ。しかもそれが、目を三角にしてすっ飛ばしたりしなくてもユーザーにクルマの良さとして伝わるところに強みがある。いわゆる毎日の何気ない運転でも楽しく、疲れにくいからこそ快適で、そして意のままに走らせることができるという、どんなドライバーにもメリットとして感じられる部分が多い。このことが直近5年のマツダを支えてきた原動力であり、世界各国で評価されている一因だと筆者は考えている。
 
 ただ、こうした“楽しく、快適、意のままに”という抽象的なイメージだけでは伝わらないマツダの良さもある。そこでマツダは、“どうして楽しく快適なクルマが作れるのか?”という開発のプロセスを「躍度」(やくど)という値で数値として我々に見せてくれるという。聞き慣れない躍度とはいったいなにものなのか……。
  
 ものすごーく簡単に説明すると、躍度とは「勢い」を示す単位だ。たとえば、手に持ったボールを素早く投げるには素早い腕の振り(による素早い躍度)が必要だが、反対にゆっくり投げるには腕もそれにならってゆっくり振りかぶり、やまなみにボールを投げる技(によるゆっくりとした躍度)が必要にある。つまり、投げ方を変えることで躍度/勢いはコントロールできるわけだ。
 

ND型ロードスター

 この躍度/勢いのコントロールをクルマの運転に例えるとこうなる。

 右折待ちの状態から対向車線の切れ目を確認してサッと右折をしたいときは「素早い加速を伴う勢い」がほしいが、駐車場で周囲の安全を確認しながらじんわり速度を上げたいときには「ゆっくりとした加速を伴う勢い」がほしい。こうした状況に応じた(素早い/ゆっくりとした)加速の勢いこそ、まさに躍度そのものだ。
 
 また、この躍度はアクセルを踏んだ際の加速時だけでなく戻した際も発生するし、ブレーキを素早く/ゆっくり踏んだ際の減速時にも発生する。さらにステアリングを左右に動かした際の横方向の加減速度にも発生することから、クルマの前後左右方向の勢いを示す値としても捉えられる。
 
 ここまでの解説で躍度の考え方は多少なりともおわかり頂けたかと思うが、では冒頭の“楽しく、快適、意のままに”といった抽象的なイメージを実際にクルマで体感するにはどこが大切なのか? 
 

CX-8

 大切なことは次の2点。①“ドライバーがイメージした通りにクルマが動く”ように、ドライバーが行うアクセルやブレーキ、そしてステアリングの操作に対していつでも忠実に反応するようなクルマを作ること。②ステアリングを操作した際の「手応え感」や、アクセルやブレーキペダルを踏んだり戻したりした際の「踏み応え感」に加え、それらを動かす際の「操作スピード感」に対して、ドライバーの想像するイメージと、クルマの実際の動きが常に連携していなければならないことだ。
 
 我々ドライバーとして意識すべきは②の連携が成立しているかを確かめること。連携なくして“楽しく、快適、意のままに”というクルマは実現しないからだ。しかもこの連携は、どんな路面状況(晴天、雨天、雪道、砂利道)でも途切れることなく、そして忠実にドライバーの運転操作を反映させなければ意味は半減してしまう。よってこうした連携はマツダが力を入れて開発している部分でもあるという。
 
 そこで今回は、誰もが運転操作に不安を覚える路面状況でも連携が保たれているのかを検証すべく、マツダ車で雪道(マツダ総合自動車試験場 北海道剣淵試験場)を走らせてみた。さらに、試乗したたくさんのマツダ車のうちCX-5には躍度が計れるセンサーと、その結果を映し出す計測モニターを車載し、本当に“楽しく、快適、意のまま”の走りが実現できるのかをリアルタイムで筆者の目を通じ確かめてみた。
 

躍度を示すセンサー

 躍度は数値なのでなかなか文章や画像では判断がつきにくい部分があるものの、実際に雪深いテストコースで計測しながら走行してみると、滑りやすくて、ステアリングがとられやすく、そしてスリップしやすい雪道であっても、ドライバーのイメージした通り、いや正確にはイメージに近いクルマの動きを伴って走らせることができることを確認できた。
 
 躍度の計測結果がわかりやすく出るように、助手席に座るエンジニア(井上雅雄氏 マツダ・パワートレーン開発本部走行・環境性能開発部)からは、「ここでアクセルを踏んで40km/hまで加速」、「あのラインを目印に停止するようにブレーキ」といったお題を頂きその通りに走ったわけだが、計測モニターに映し出されるセンサーが捉えた躍度をもとに、運転操作を少しずつ微修正しながら運転していくと同乗者にも快適で疲れない車内空間を作れることがわかった。
 

躍度を実感しながら雪上を試乗

 これを逆説的に捉えると、こうした微修正に対してまでも忠実に反応できるクルマ作りが行われているからこそ、ドライバーや同乗者が体感する躍度/勢いをコントロールすることができるわけで、結果的に自分の運転操作を通じて“安全、快適、意のまま”の走りを手に入れているという図式が成り立っているのではないか、という感想を抱いた。自分の運転イメージを、ステアリング/アクセル/ブレーキのコントロールで忠実に再現できるクルマに乗ることは、自分自身の手足を拡張した新種の乗り物に乗っていることと等しい。こう感じられたことも今回の取材を通じた収穫だ。
 
 じつは筆者の愛車はND型ロードスター(販売中の現行車)なのだが、乗り度にしっくりと身体に馴染んでくる感覚が強くなるのは、こうした躍度/勢いのコントロールがしやすかったからなんだぁ、と一人納得した次第。マツダには今後もクルマ好き、運転好きを貫いて頂きたいです。 <取材・文/西村直人>




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