日本人は「時間を守ることを優先」し、イギリス人は「人生を楽しむことを優先」する
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
イギリス留学時代の演劇学校の先生が友達と日本に遊びに来るというので、色々と世話をしてきました。
歌舞伎や相撲見学のプランを滞在スケジュールにあわせて練りました。
歌舞伎は再会を兼ねて一緒に見ることにして、銀座の歌舞伎座の前で待ち合わせました。
僕はじつに日本人らしく約束の10分前に着いて待ちました。「歌舞伎座の向かって右側にいます」なんてメールまで送るわけです。
が、約束の時間になってもウェンディー先生は現れません。小学館文庫『ロンドン・デイズ』に登場するアニマル・クラス担当のウェンディー先生です。生徒達に、「毎週末、ロンドン動物園に行って動物を観察して、真似して下さい。今週は、まずはライオンね」なんて指示を出して、僕達生徒の週末を奪ってしまった先生です。
と言って恨んでいるわけではなく、ウェンディー先生の動物の真似がムチャクチャうまくて、みんな唸りました。なるほど、動物を観察して、やがてそれを人間に応用して、いろんなキャラクターをやるんだなと感心したのです。
そこらへんのことは、じつはこの連載から『ドン・キホーテのロンドン』という一冊になっていたのですが、現在、絶版です。うむむ。
「今、どこにいますか?」なんてメールを約束の時間の3分後に送りました。日本人ですね。
で、5分過ぎてさすがにドキドキし始めました。連絡はないし、約束の時間は過ぎてるし、さあ、困ったぞと思っていると、10分近く遅れて、ウェンディー先生は現れました。そして「今、みんなでお茶してるから、ショージも来ない?」なんて楽しそうに言うのです。
「今日は、築地に行って、相撲部屋を見ようとして、皇居行って、疲れたから、みんなでお茶してるのよ」
歌舞伎座のすぐ傍の喫茶店に入りながら、ウェンディー先生は説明しました。

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『この世界はあなたが思うよりはるかに広い』 本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録 ![]() |
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