雑学

日本語の悪口「ブス・デブ・ババア…」は世界基準では許されないことにハッとした/鴻上尚史

― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

罵り言葉が少ない、とされる日本語の“悪口”について


 ネットをさまよっていたら、ロシア系関西人の小原ブラスさんの書いた「[外国人が見るニッポン]なぜ? 日本人の罵り言葉が『酷すぎる』と外国人に驚かれるワケ」(zakzak)という興味深い文章と出会いました。

「一般的に日本語には罵り言葉が少ないと言われています」とブラスさんは書きます。

「ロシア語の場合、『バカ』の一言をとっても10種類以上の言い回しがあります。またそれぞれ『バカ』の度合いが違います」

 へえっと思った人も多いでしょう。これは、日本語だけを使っているとピンと来ないかもしれませんが、(ロシア語はわかりませんが)英語と比べると本当に少ないのです。

 演劇のレッスンで、二人向き合い、悪口を言い合うというものがあります。感情を解放したり、言葉の力を経験したりと、いろんな目的があるのですが、英語でこのレッスンをやると、えんえんと続きます。

 ところが、日本語でこれをやろうとすると、「バカ」「アホ」「キ○○○」など数種で終わってしまうのです。もちろん、「アンポンタン」だの「すっとこどっこい!」「トンマ」「オカチメンコ」など、無理して言おうと思えば言えますが、こういう言葉を連発しているうちに、思わず笑ってしまうのです。

 このことに、僕は昔から不思議でした。

「日本人は優しいから、罵る言葉が少ないのかなあ」とノンキに考える人がいるかもしれませんが、事情は違うようです。

 ブラスさんは書きます。

「一般的に世界で許される罵り言葉は『行動や状況に対する罵り』となります。例えば性にだらしない女性を罵るような言葉(敢えてここでは単語を出しません)や、『馬鹿』などもその人の行動に対する罵りとなります」

「一方で、許されない罵りが『その人の普遍的な特徴に対する罵り』です。つまり人種、容姿、年齢、宗教等を罵るような言葉です」

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日本語のポピュラーな悪口は世界ではキツい

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本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





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