更新日:2022年12月26日 01:21
ライフ

日本人は「時間を守ることを優先」し、イギリス人は「人生を楽しむことを優先」する

約束の時間を守ってしまう日本人

 ああ、この感じ。こっちは時間にひりひりして、イギリス人はノンキな感じ。と強烈に思い出しました。  2007年、『トランス』という作品をロンドンで上演した時のことです。  初日の前日、リハーサルを終えて、「明日は2時から舞台の上で今日の感想(ダメ出し)をします」と伝えたのに、2時になってもイギリス人の俳優達は現れませんでした。  10分ほど待って、じりじりして楽屋に行ってみると、全員、優雅にお茶を飲んでいました。僕は思わず、厳しい顔で見つめました。  一人が「どうしたの、ショージ?」と聞きました。もう一人が、ハッとして「ごめんなさい、ショージ」と謝りました。そして「ショージもお茶が飲みたいのね。私達だけで飲んでごめんね」と微笑んだのです。 ドン・キホーテのピアス 僕は腰が抜けそうになりながら「ありがとう。お砂糖を多めにね」と答えました。コントみたいですが、本当の話です。  イギリス人でさえこうなんだから、ラテン系のイタリア人やスペイン人は推して知るべしです。  時間を守ることより、人生を楽しむことを優先しようとする人達です。やろうと思っても、日本人はできそうにありません。つい、時間を守ることを最優先しそうになります。  歌舞伎座では、たくさんの外国人がいました。本当にインバウンドが盛り上がっているんだなあと実感します。ちゃんと、英語字幕の翻訳ボードがレンタルされていました。小さな液晶のデータボードで、前の席に簡単につけられるようになっています。ちょうど、飛行機のエコノミー席のテレビ画面みたいになります。  役者のセリフが英語で表示されます。日本語を聞いてよく分からない時は、僕もおもわず翻訳ボードを覗き込みました。そっちの方がよく分かったりするのですから、困ったもんです。  ウェンディー先生は、今、演劇学校で中国人生徒を教えているんだそうです。オーランド・ブルームやユアン・マクレガーが卒業したギルドホールという所なのですが、なんと北京の演劇学校の生徒が2年間、英語で特別授業を受けているのです。北京で2年、ロンドンで2年のカリキュラムだそうです。  思わず絶句しました。なんという戦略。世界に通用する俳優を着々と用意しているのです。おそるべし。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて連載中
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

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