ミック・フォーリー クレイジー・バンプの哲学――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第91話>
1990年代後半のアメリカ国内でのプロレス・ブームを追いかけていたはずのドキュメンタリー映画『ビヨンド・ザ・マットBeyond The Mat』(バリー・W/ブラウスティン監督=1999年)は、いつのまにかフォーリーと家族の物語を描いていた。
フォーリーはマンカインド、ドゥード・ラブ、“復刻版”カクタス・ジャックの3つのアイデンディティーをシチュエーションに応じて使い分けるようになった。
人気者になったマンカインドはコメディもこなすようになり、汚いソックス“ミスター・ソッコー”とそのソックスを相手の口にのなかに突っ込む拷問技がバカ受けして、ロックとマンカインドのロックン・ソック・コネクションというタッグチームが誕生した。
音楽をテーマにするときはドゥード・ラブに変身して、ハードコアな試合をするときはやっぱりカクタス・ジャックがそこにいた。
ゴーストライターを使わずにフォーリーが手動式のタイプライターを使って書いた自伝本『ハブ・ア・ナイス・デーHave A Day』がベストセラーになった。
マンカインド、ドゥード・ラブ、“復刻版”カクタス・ジャックをへて、フォーリーはアーティストとしてのほんとうの顔であるミック・フォーリーをカミングアウトさせた。
15年におよぶクレイジー・バンプの蓄積ですでにフォーリーの肉体はボロボロになっていた。ネルシャツとスウェット・パンツのふだん着に戻ったフォーリーは、“レッスルマニア2000(16)”を引退の舞台に選んだ(2000年4月2日=カリフォルニア州アナハイム)。
作家に転向したフォーリーは『フォーリー・イズ・グッドFoley Is Good』、子ども向けの童話『クリスマス・カオスChristmas Chaos』『ハロウィン・ハイジンクスHolloween Hijinx』『テールズ・フロム・レスキャル・レーンTales From Wrescal Lane』といった作品群を次つぎに発表した。
リングに上がらなくなったいまでもやっぱりフォーリーがWWEスーパースターであることは変わらないし、気が向けば“ロウ”や“スマックダウン”にも出演する。
フォリーがいちばん大切にしているのは、観客とのシェアした時間とそのエナジーである。
フォーリーの本には、フォーリーが少年のころ夢中になったスーパースターたちがちょっとずつ登場してくる。
フォーリーのたぐいまれな文才とそのイマジネーションは、やがて“プロレス文学”というまったく新しいジャンルを開拓することになるのだろう――。
●PROFILE:ミック・フォーリーMick Foley
1965年6月7日、インディアナ州ブルミントン生まれのニューヨーク州ロングアイランド育ち。1985年、デビュー。カクタス・ジャックのリングネームでインディー・シーンで活動。クレイジー・バンプで一世を風び。WCW、ECWに在籍後、1996年にWWEでマンカインドに改名。WWE世界ヘビー級王座通算3回保持。2000年、引退。2013年、WWEホール・オブ・フェームで殿堂入り。現在は作家、俳優、コメディアンとして活躍。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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