仕事

なぜホームレスたちは生活保護を受けないのか?

お金がありすぎてホームレスになった

 再びAさんとの話に戻る。Aさんによると、「お金がありすぎて路上生活者になってしまうバカな奴もいるんだよ」という。お金がありすぎてホームレスとはどういうことだろうか? 「生活保護を受けながら、内緒で日雇いの仕事に行く連中がいるんだよ。生活保護と週に3日の現場仕事で月収20万以上。ドヤに住んでいれば、かなり余裕のある生活ができるよな。でも周りの告発やらなんやらでバレるんだ。それで生活保護は廃止。他の区に移って保護申請してもデータが残っているからもちろん却下。そうやってホームレスになるしかない奴もいるんだぞ」
山谷

玉姫公園は山谷地区におけるホームレスの聖地

 生活保護を受給していても働くことはできる。しかし、生活保護は最低限度の生活を送るために足りない分を援助してもらう形のため、当然収入があれば申告しなければならない。そのため生活保護の不正受給ということになるのだ。 「路上生活などしないで生活保護を受ければいい」。言葉にするのは簡単だが、ホームレスたちにもそれぞれ事情や考えがある。不正受給をしていた人間は法的にも感情的にも救いようがないが、生活保護を受けて最低限度の生活を送るよりも、路上で“自立”して生きていきたいと考える人もいるということだ。<取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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