「15人の暗殺チーム」を指示した首謀者・ムハンマド皇太子の正体
「そもそも一夫多妻制のサウジには王族が数千人もいて、今も増え続けており、正確な数は把握されていません。昨年、サルマン国王が来日した際は、1500人の大随行団の羽振りのいい外遊が話題となったが、裕福な王族は国民の目に触れない海外に城を持ち、イスラム教で禁じられた酒を飲んだりカジノにのめり込む王族もいるほど。
王族の富を支えているのは、国営石油企業のサウジアラムコで、国王への近さによって額が変わる恩給が支給され、ロイヤルファミリーのサウド家には年間数十億ドルが転がり込んでくる。ムハンマド皇太子が主導した昨年11月の王族大量拘束では、反体制派を一掃したうえで、解決金名目で4000億リヤル(約12兆円)を没収したが、ちょうどこれと同じ頃、ムハンマドのいとこのマンスール・ビン・ムクリン王子がヘリコプターで墜落死しており、こちらも粛清説が燻っています」
カショギ氏が失踪した当初、米国のトランプ大統領はムハンマド皇太子を擁護する姿勢を見せていた。昨年5月にサウジが米国史上最大の約1100億ドル(約12兆3000億円)にも上る武器購入契約を結んだことや、トランプ大統領とサウジ王室が長年にわたって蜜月関係を続けてきたビジネスパートナーであったことが背景にあるからだ。だが、事態は急転したと言っていいだろう。前出の佐々木氏が話す。
「当初描かれていた政治決着のシナリオは、トルコ・サウジの合同作業部会がカショギ氏の死亡を発表し、あくまで、サウジ人の“跳ね上がり”集団による犯行で、ムハンマド皇太子の関与はなかったとするものでした。
ところが、途中からこのシナリオに狂いが生じたのです。調整役として現地入りしたポンペオ国務長官がムハンマドと会談したが、殺害を指示した当事者と満面の笑みを浮かべて話している写真が報道され、米議会から批判が噴出しました。暗殺部隊15人のうち7人がムハンマドのボディガードだったことも明らかとなっており、中間選挙を控えた今、トランプ大統領は戦略を見直す必要に迫られている。
今後、サルマン国王が死んで後ろ盾がなくなったとき、王位継承がスムーズに行えるかも不透明ですし、反ムハンマド勢力に加担したほうが国益に叶うなら、米国もムハンマドを切り捨てるかもしれない」
一段と混迷を深める中東情勢を受け、米国中間選挙はどう転がるのか?
取材・文/日刊SPA!取材班
※週刊SPA!10月30日号「今週の顔」より
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