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「世界最悪のアウェー」危険な国イランは行ってみたら意外にもフレンドリーだった

「イランと言えばアメリカと敵対している、過激なイスラム宗教の危険な国」という漠然とした印象を持っている人は多いだろう。そんなイランで、先日、鹿島アントラーズがアジアチャンピオンズリーグを制した。試合についての詳細は各報道をご覧いただくとして、1泊4日のイラン弾丸ツアーに参加した記者からはイランの現状についてご報告したい。 「世界最悪のアウェー」と言われるペルセポリスのホームであるアザディ・スタジアムは実際どんな雰囲気だったのか?

試合前半戦終了時

日本からイランへの直行便はない!

 まず、イランに行くにはイラン・イスラム大使館にビザ申請をしなければならない。直接大使館に行って申請をするか必要書類を郵送しなければならないのだが、事前にE-VIZA申請を行い、緊急申請を申し出ればビザは即日発行される。  日本からイランへの直行便は飛んでいないので、どこかの国を経由して行くことになる。今回、私はカタール航空を利用しカタール経由でイランに向かった。日本からカタールまでが約12時間、カタールからイランまでが約2時間という道のりであった。  今回、アザディ・スタジアムで観戦するためイランに向かう日本人は全員、鹿島アントラーズに訪問予定を事前にメールで報告し、無用なトラブルを避けるため現地邦人も含め、日本人はすべて専用バスでスタジアムに移動をすることになった。  だが、スタジアムがあるテヘラン市内すべてが敵地かと言えば実はそんなこともなかった。

車からタオルマフラーを振るイラン人

 なぜなら、テヘランにはペルセポリスの他にエステグラルというライバルチームが存在し、エステグラルのファンたちはペルセポリスの敗戦を心から望んでおり、むしろ鹿島を応援しているほどだった。空港で何人かのイラン人が「エステグラル、エステグラル。カシーマ、ビクトリー」といった片言の英語で話しかけて来たり、鹿島アントラーズの公式SNSアカウントや鹿島ファンのツイッターには、決勝戦1stレグの前からエステグラルファンからの友好的?な書き込みが溢れていた(要するに「ペルセポリスを倒せ!」という書き込みである)。  記者は、テヘランにあるエマーム・ホメイニー国際空港からツアー会社の用意したバスに乗りスタジアムに向かった。スタジアムまでは約1時間の道のりだったが、バスが高速道路を走っていると、あちこちでブブゼラが鳴ったり、ペルセポリスの旗をなびかせた車が走っている。

バスに手を振るイラン人

 ペルセポリスファンが乗った車が日本人バスに気づくと、こちらに向かってクラクションを鳴らして来たりもしたが、車が近づくと笑顔で手を振ってきたり手でハートマークを作ったりと、挑発しているというよりは歓迎されているムードだった。

高速道路上に車を止めているペルセポリスサポーター

 スタジアムに近づくにつれて、ペルセポリスファンが増えていく。ペルセポリスはイラン全土で圧倒的人気を誇るサッカークラブで、ACL決勝ともなると全国各地からファンが押し寄せ、試合前日の夜からスタジアム周辺には多くのファンがたむろしていたそうだ(そして現地ツアーガイドいわく、日本人に石を投げたりする輩はそういうお祭り気分の連中だそうである)。  先ほどの高速道路同様、道を歩いているイラン人たちがもの珍しそうに私たちが乗っているバスを見てくる。「3-0でペルセポリスが勝つぞ」というジェスチャーをしてきたり、たまに中指を立ててくる者もいたが、先ほど同様、みな笑顔でこちらを見ており挑発されている感じはまったくなかった。

スタジアム前のイラン人たち

 スタジアムに到着し、1時間ほど車中で待機をした後、現地警察に囲まれながら団体でスタジアムに入場した。現地スタッフからは「写真を撮ったり、相手を挑発するようなことは絶対に控えてください」という忠告があった。

団体入場の様子

 バスからスタジアムまでの間、記者たちの周りで多くのイラン人たちが騒いでいた。今回は警察官がいたので少々緊張感もあったが、やはり概ね笑顔でこちらを見ていた。言葉はわからないが興奮して汚い罵声をとばしてくるような素振りもなかった。
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スタジアムに鳴り響く大音量のブブゼラに最初は怖気づいたが……
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