仕事

2800万部の自己啓発本『チーズはどこへ消えた?』続編が登場。ビジネスマンは何を学べるか

自己啓発本といまどきのビジネスマンは相性がいい

 ベストセラーの書評を多数手がけ、ビジネス・自己啓発本の歴史にも詳しいライターの速水健朗氏は、「景気が悪いと自己啓発ブームがくる」と語る。 「なぜなら自己啓発という思想自体が、’29年の世界大恐慌に端を発し生まれたものだからです。なかでも禁欲を説くプロテスタント系への反発を背景に生まれた異端的宗教“ニューソート”をビジネスに応用したナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』(’37年刊行)が、現在の自己啓発本の原点とされています。 近年『引き寄せの法則』として注目を集めるポジティブ・シンキングの元祖も、’52年に牧師のノーマン・ピールが書いた『積極的考え方の力』。このようにアメリカの自己啓発本の背景には大きな宗教的思想があるのですが、多くの日本人はそのことに疎い」
速水健朗氏

速水健朗氏

 ニューソートとは、スティーブ・ジョブズにも影響を与えたヒッピー、ニューエイジ・ムーブメントの源流。’70年代には「人間の潜在能力には無限の可能性がある」と説く、新たな思想として西海岸を中心に広がっていく。 「仏教の瞑想から発展した『マインドフルネス』、やたら見かける『スタンフォード式◯◯』など、東洋思想とテクノロジーを結びつけた西海岸的ニューエイジ思想は、いまどきの起業家マインドと相性がいい。だからこそ、現代のビジネスマンにも受け入れられやすいのでしょう。『自分の中にある力を信じれば、道が開かれる』というんだから、ある意味“ビジネスマン向けの邪気眼開眼メソッド”かもしれません」  確かに、ポジティブ・シンキングを軸にした自己啓発本は多い。股関節の柔軟性を高めれば仕事がうまくいくという驚きのメソッドで100万部のベストセラーになった『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』や、“こんまり”こと近藤麻理恵の『人生がときめく片づけの魔法』がそうだ。 「こんまりメソッドは、Netflixのオリジナル番組にもなり『日本的アニミズムの輸出だ』と騒がれていますが、典型的なアメリカ的自己啓発。ポジティブ・シンキングというアメリカ発の自己啓発を咀嚼した逆輸出だと考えます」  そう昨今の自己啓発本を俯瞰する速水氏は、『チーズはどこへ消えた?』シリーズをどう位置づけるのか。 「多くがそうであるように、この本も著者のセミナーがもとになっていますよね? でも、寓話という抽象化された手法によって没入感を高め、ビジネスパーソン以外の幅広い層に読ませることに成功した。自己啓発セミナーから派生したビジネスのひとつに、コーチングがあります。 オフィスの動線を変え、挨拶をしやすくすると人間関係がよくなり離職率が下がる……など実際に成果が出るメソッドが存在することも確か。『チーズは~』は大谷翔平選手も読んでいるそうですが、高いモチベーションを日常的に保つ必要のあるアスリートは、時に“おまじない”的な自己暗示も重要。 そういう意味で、実行性を伴った普遍的価値観を提示しているのでしょうね」  気持ちを奮い立たせ、自信を得るのに効果的な本書。前時代的な上司との摩擦や業界の変化に悩むビジネスマンにとって、モチベーションを高めるためには必携の一冊といえる。

大ベストセラー作家スペンサー・ジョンソンの知られざる素顔

▼注目されるのは嫌い!……ベストセラー作家ながら、スペンサー・ジョンソンの人となりを知る人は少ない。「必要以上に注目されることを嫌っていたようで、本国でも限られたメディアにしか出ていません」(門田氏) ▼児童書作家としてのキャリア……医学博士・心理学者でもあったスペンサーは、ビジネス書を手がける前に、リンカーンやヘレン・ケラーなど偉人を題材にした児童書を執筆していた。寓話というスタイルへの影響が窺い知れる ▼日本には一度だけ来日……世界周遊の折、10年前に一度だけ来日した際は、六本木で誕生日会を開催後、家族を引き連れ箱根に宿泊。「当然うち持ちでした(笑)」とは、担当編集者の弁。残念ながら本人は2017年、78歳で逝去 【門田美鈴氏】 ライター、翻訳者。P・グレン『それは私の担当ではありません!』(’92年)を皮切りに、これまで50冊の海外発ビジネス書の翻訳を手がけている 【速水健朗氏】 ’73年生まれ。ライター。『東京β』など著書多数。ラジオ『速水健朗のクロノス・フライデー』『TIME LINE』(共にTOKYO FM)に出演中 取材・文/仲田舞衣
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迷路の外には何がある?――『チーズはどこへ消えた?』その後の物語

スペンサー・ジョンソン著。日本で400万部、全世界で累計2800万部突破の大ベストセラー『チーズはどこへ消えた?』の続編。閉塞した状況を打破し、人生と仕事の変化に適応する道を示す

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