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東日本大震災、賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」の格差

 東日本大震災から8年。被災地では復興に向かい協力し合う姿がクローズアップされがちだが、美談だけではない。原発から30キロのラインを境に問題が起こっているという。賠償金を手にすることができるのは、この圏内に住んでいた人たちだけなのである。わずかでも外に出れば、一切、賠償金は支払われない。

 そんななか、「賠償金によって被災者の間に生まれた格差が暗い影を落としている」と話すのは、いわき市の元大手住宅メーカー営業マンで、『震災バブルの怪物たち』(鉄人社)の著者である屋敷康蔵氏だ。今回は、着々と復興に向かっているように見える被災地で、東電からの莫大な賠償金に翻弄され続ける住民たちの実情を語ってもらった。

市勿来海岸

いわき市勿来海岸にて。勿来町は一時期、報道の空白地帯となっていた

被災地におけるお金の話題は一種のタブーだった


 栃木県出身の屋敷氏は1995年から大手消費者金融で10年間、不動産担保ローンの貸付けと回収業務に携わった後、2005年より不動産業界に転身。2010年代に大手住宅メーカーに入社し、いわき市内の営業所で働く住宅販売の営業マンとして、東日本大震災以降は多くの被災者に住宅を販売してきた。

「住宅メーカーの社員はお客さんの所得証明を見る機会が多く、東電からの賠償金をもらった人とそれ以外の被災者との格差を感じる機会が多かったですね」

 屋敷氏の身内にも実際に被災者がおり、震災前後の被災地で住宅メーカーの社員として働くなかではもちろん、同業者から賠償金の話を聞かされることも多かったという。

 17年以上にわたり福島県で暮らす屋敷氏だが、現在は同社を退職。自宅のリフォームや修繕をメインに扱う会社に勤務している。人のお金に対する執着や欲望に当てられ、半ばノイローゼになりながらも、実情を明らかにすることを決意した。

 原発事故の賠償金を手にした人のなかには、働くことをやめてしまったり、派手に遊んでいたり、パチンコをしながら悠々自適に暮らしている人もいたそうだ。そんな姿に憤りを感じることもあったというが……。

「ぶつけようのない怒りのような衝動で『震災バブルの怪物たち』を書いたようなところもありますが、被災者すべてが賠償金で派手な生活をしていると思われるのは、また新たな誤解を生むことになる。賠償金の額の多寡に関わらず、ほとんどの方は賠償金をもらいひっそりと慎ましく暮らしています。

ただ、地元でも気心の知れた仲間内ならともかく、あまり公に賠償金の話をすることはありません。被災地におけるお金の話題は一種タブー視され、メディアでもあまり大々的には取り上げられてこなかった。それだけに、私も福島県から一歩県の外に出ると、福島県というだけで被災者として相当お金をもらっていると勘違いされることもあり、多くの県民の実状と乖離を感じていました」

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「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」

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震災バブルの怪物たち
被災地における涙と感動とは別の側面の、莫大で上限の無い震災マネーにより、己の貪欲の犠牲者となる住民の有様を包み隠さず伝えていく。復興の一端を担う被災地の住宅メーカーに勤務していた著者の「どちらもお客様である」という立場から、中立な視点で現在の問題を伝えるルポである。





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