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東日本大震災、賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」の格差

原発御殿が一等地に建設される一方で…

「いわきには広大な土地があるにも関わらず、ほとんどが農地を推奨している調整区域という土地で、住宅に使える市街化区域という土地は本当にわずか。調整区域を解除して宅地造成すればもう少し状況は変わったかもしれませんが、住宅として使える土地は調整区域の3分の1もない。 調整区域は4年に一回解除の見直しができますが、結局解除しても民間の宅地造成業者や不動産業者が間に入る。そうすると地権者の方も土地が不足している中で、なるべく高く売ろうとするのが普通です」  平成27年度全国直上昇率ベスト10では、そのすべてをいわき市が独占しているが、宅地不足に伴う土地の値上がりよって、住宅事情は一変。様々な形で市民生活に影響を及ぼしているという。  賠償金でパチンコをしようが何をしようが、当人の自由であることは強調しておくべきだが、莫大な東電からの賠償金の影響をモロに受けるいわき市の地元住民たちの心情がざわつかせるのも無理からぬことだろう。
ニュータウン

震災前、300区間売れ残っていたニュータウンが完売

 原発御殿が一等地にどんどん建設され、「警戒区域の自宅は別荘として思い切りリゾートっぽくリフォームしたい」と要望する人も、一人や二人ではないそうだが、家賃補助などの賠償金もないいわき市民は家賃の高騰で同居もままならない新婚カップルも続出したそうだ。 「私も持ち家ですが、震災前に900万円で買った土地を査定に出してみたらいま1500万円でした。住宅メーカーは所得証明から、その人にあった土地を提案しなくてはいけません。 現金のある原発被災者の方は自然と高台のいい土地に集まり、いわき市民の方はそうしたいい土地は手が届きにくくなってしまった。避難解除に合わせて補償も徐々に打ち切りになってきていますが、土地の値は急激に下がることはなく、賃貸価格もピーク時からほぼ横ばい。一度火のついた部分はなかなか元には戻らないですね。 避難解除で戻るとしても高齢者の方が多く、8年も経つと特に子供がいる世帯はもう避難先での生活があります。特に小さい子供がいる場合、いくら除染しているとはいっても、あえて戻ろうとは考えにくいでしょう」 「川の流れの澱みに浮かんでいる水の泡は一方では消え、一方では生じて、長いあいだそのまま留まり続ける例はない」とは方丈記の一節だが、数千万円単位の賠償金によるバブルの影響は、そう簡単には消えないようだ。<取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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震災バブルの怪物たち
被災地における涙と感動とは別の側面の、莫大で上限の無い震災マネーにより、己の貪欲の犠牲者となる住民の有様を包み隠さず伝えていく。復興の一端を担う被災地の住宅メーカーに勤務していた著者の「どちらもお客様である」という立場から、中立な視点で現在の問題を伝えるルポである。
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