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東日本大震災、賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」の格差

「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」

 そもそも被災地に縁遠い人なら、原発避難者と津波被災者の支援が一緒くたに考えられている向きもあるが、東電の賠償金の対象者は原発~20キロ圏内と20キロ超~30キロ圏内の住民だけ。前述のとおり、この30キロラインからわずかでも外に出れば自主避難区域となり一切、支払われない。  東電による賠償金が平均的な4人世帯で約6300万~1億円超という莫大な金額である一方、逆に津波被災者の場合、被災者全てが対象の「生活再建支援金」しか基本的には存在しないのが現状だという。 「生活再建支援金は数百万円単位で、家や暮らしを本当に再建するにはとても足りない。あとは代替地といって津波で流された代わりの土地を安く買えたり、好条件で融資が受けられたりする程度。東電の賠償金の額もバラツキはありますが、東電からの賠償金をもらえる人ともらえない人では、特に大きな差がある。少なくとも津波被災の方は相当複雑な感情を抱いていると思います。生活していた家を失ったという意味では、原発避難者も津波被災者も同じわけですから」  しかも、いわき市は東日本最大級の津波被災地。いわき市沿岸部の薄磯地区の津波被害は死亡者115名(2017年7月いわき市調べ)と甚大だ。  原発避難者も数多く移り住み、いわき市は境界線の内側と外側とで東電からの賠償金を「もらった原発被災者」と「もらい損なった津波被災者」が多く住むことも、事態を複雑にしているようだ。 「どこで線引きしても結局同じような問題は起きただろうと思いますが、単純に原発を中心とする同心円状の線引きは、どこまで科学的な根拠に沿ったものか疑問です。田舎なので大家族も少なくないですが、世帯一人当たり月10万円というどんぶり勘定で、7人家族だと毎月70万円も援助される。 加えて就労不能損害の補償では震災前の年収も保証され、たとえ、新しい仕事に就いたとしてもその収入分が補償から差し引かれるだけ。それで働けという方が無理な話かもしれませんが、中にはお金の使い方が露骨にハデな人も一部で見かけます」  また、東電社員の所得証明を見た際、震災直後の“ボーナスカット”でも震災前と遜色ない年収だったという点にも屋敷氏は苦言を呈する。実際に政府から東電に資金が流れている以上、寄らば大樹の陰とも言うべき状況もあるようだ。
除染土の袋

除染作業により出た除染土の袋

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原発御殿が一等地に建設される一方で…
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震災バブルの怪物たち
被災地における涙と感動とは別の側面の、莫大で上限の無い震災マネーにより、己の貪欲の犠牲者となる住民の有様を包み隠さず伝えていく。復興の一端を担う被災地の住宅メーカーに勤務していた著者の「どちらもお客様である」という立場から、中立な視点で現在の問題を伝えるルポである。
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