包丁を振り回して抵抗する人も…強制執行の壮絶現場
住宅ローンの滞納や家賃未払いなどによって、実行される強制執行。突然のリストラ、病気、会社の倒産などさまざまな理由で住居を強制的に追い出されてしまう人は少なくない。
「突然ナイフで自分の首を切りつけた人もいましたね」
そう話すのは、年に数百件以上の現場を担当するという強制執行請負人のKさん(50歳)。知られざる強制執行の現場について話を聞いた。
「ほとんどは家賃の未払い。裁判所が強制的に家から追い出すわけですから、極限状態に陥ってしまう人が多いですね。(冒頭の)自分の首をナイフで切りつけた人もそうですが、現場で包丁を振り回しながら『帰れ!』と慟哭する人もいました。そのときは、毛布で債務者を包みロープでグルグル巻きにしたこともありました」
住む家が突然奪われるということを想像すれば、気が動転してしまうのも頷ける。だが、裁判所が決定した強制執行は、いかなる理由があろうとも決められた日時に実行される。
「開始時刻になれば、鍵屋さんが来て解錠してもらいます。でも、なかにはドアノブを内側から押さえつけて侵入を阻む人もいるんですよ。気持ちはわかりますけどね。また、部屋に入ったら布団にくるまって、たぬき寝入りする債務者もいました。こちらが何度声をかけても、一切の反応を返さないので困りましたね。結局、作業員4人で寝ている布団ごと家の外まで運び出すということもありました。
ほかにも、不在だと思って搬出作業を進めていたら、奥の部屋の押し入れの中に債務者が隠れていて……荷物を出そうと開けた瞬間にご対面というときも。あのときは、心臓が止まるかと思いましたよ」
追い込まれた人間の行動は予測がつかない。
包丁を振り回し、たぬき寝入りする人も
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