仕事

「発達障害と就職試験」当事者の切実な悩みとは?

発達障害の方は本当に正直に発言してしまう

 こうした特性に加えて、ADHDの方に多い【利他】性や衝動性が加わると、事態は一層複雑になります。本人は、「人の役に立ちたい」という100%の善意で行動しているため、その自分の善意が否定されたと勘違いして、必要以上に落ち込んでしまうのです。 光武「中本さん、僕は中本さんの『人のために何かをしたい』という気持ちが本物であることを知っていますし、そこと否定するつもりもありません。でも、中本さんをよく知らない面接官は、事前情報抜きに中本さんを評価するわけですから、その会社にとって中本さん自身が何を与えられるのかをもっと上手にアピールする練習をしてみてもいいんじゃないですか?」 中本「そうなんですね、あんまりそういうこと考えないで働いていたから、難しそうだってちょっと身構えちゃいますよ」 光武「そんなに難しいものじゃないですよ。他の人から見たときに『この人ウチで役に立ちそうだな』って思ってもらうフリをするだけですから。」 中本「なんだか人をだましているみたいで気が引けます」  発達障害の方は本当に正直に発言してしまうんですね。自分の思ったことをそのまま。嘘をつくのも大嫌いな人がたくさんいます。見た目に無頓着な方が多いのも、嘘をつくのが嫌で、ありのままの自然体を見せたいという欲求からなのかもしれません。 光武「それは嘘じゃないですよ。なんだろう、社会の評価基準に合わせるってだけですよ。職を得るっていうのは、きっとその企業の基準に合わせられるかどうかをすり合わせた結果なのかもしれませんね。そういう部分で、正直に生きようとする発達障害者はきつい思いをするのかもしれません」 中本「そうですかぁ。ちょっと不服ですけど、頑張って合わせてみようかな」 光武「そうです、そうです! まず合わせてみて、そこから自分の個性をゆっくり周りに認めさせたらいいんですから。頑張ってください!」  就職に関する悩みはいろいろとあると思います。特にこれから就活をする大学生は何を基準に動けばいいのか固まってしまう人もいることでしょう。中本さんのように、動機はしっかりしていても、その思いや能力を表現する術を知らないと躓いてしまうかもしれません。でも、大丈夫。そういう時のために、相談できる環境がきっとあるはずです。強すぎる思いで周りが見えにくくなっているとき、そういう時はウチでいっぱい飲んでみたらいいと思います。  おっと、新しいお客様が来店されたみたいですね。それじゃあ、また。  今回もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。 *お客側の登場人物はプライバシーの問題から情報を脚色して掲載しています。 <文/光武克 構成/姫野桂 撮影/渡辺秀之>
(みつたけ・すぐる) 発達障害バー「The BRATs(ブラッツ)」のマスター。昼間は予備校のフリー講師として働く傍ら、‘17年、高田馬場に同店をオープン。’18年6月からは渋谷に移転して営業中。発達障害に関する講演やトークショーにも出演する。店舗HP(brats.shopinfo.jp) ツイッターアカウント「@bar_brats
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

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