棺桶に入ってみたい…死を体験するイベントに若者が続々参加のワケ
終活ブームのさなかで、ひとつの不思議な現象が起きている。それは20~40代の若い世代が「死を体験するイベント」に続々参加しているというもの。終活と無縁の世代がなぜそこへ向かうのか。その現場に足を運んでみた。
いま、「死」にまつわる体験は百花繚乱だ。「死の体験旅行」や「Deathカフェ」といったワークショップ形式のもののほか、死について語り合う店舗型の「終活カフェ」や、自分が死んだときの状況をカードゲーム形式で思考する「もしバナゲーム」など多種多様。そんななか、よりリアルな「死の体験」を求める人に人気なのが「入棺体験」だ。従来、葬儀会場の見学ツアーなどで終活の一環として実施されていたが、近年は若い世代の参加も多い。
その代表格が、東京・江東区にあるカフェ「ブルーオーシャンカフェ」で定期的に行われる「自分を見つめる入棺体験~棺の中で耳をすませば~」だ。同イベントでは、己に対する弔辞をしたためた後、棺に入り、僧侶の読経とともに己の死と向き合うのだという。
なぜ、人々は、「死」をリアルに感じたがるのか。その理由を、横浜市にある寺院の倶生山なごみ庵・住職の浦上哲也氏はこう分析する。
「数十年前は、自宅で家族の死を看取るのは当たり前でした。でも、昨今は核家族化と同時に、医療の発達から病院で死を迎える人も増え、人の死を間近で見る機会が減った。『死』の実態がわからないからこそ、疑似体験を願う人々が増えているのかもしれません」
死の先に何が見えるのか。それを知るために、人は棺に入るのだ。
●「終活カフェ」……普通のカフェのようにコーヒーなどを飲みながら、終活カウンセラーらに相談が可能。エンディングノートの書き方や、死に対する心構えなどのイベントも随時開催。全国各地で、葬儀会社が運営していることが多い
●「もしバナゲーム」……千葉県亀田総合病院の医師らが開発したカードゲーム「もしものための話し合い」。ゲーム内容は終末期の希望が書かれたカードを通じ、自分の理想の死を考えるというもの。昨今、同ゲームのイベントが全国各地で実施中
●「死のワークショップ」……理学療法士や心理カウンセラーの資格を持つ真言宗の寺・福光園寺の僧侶が実施する「死生観カフェ」など、僧侶や民間による死のイベントも多数。昨年は、死から考える就活セミナー「Death Career」なども開催された
<取材・文/藤村はるな>
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