なぜ「イギリス料理は世界一マズい」と思われたのか?
現在のロンドンは、今やパリよりも注目の美食都市として地位を確立しているのだという。
イギリス在住20年で『ロンドンでしたい100のこと』(自由国民社)などの著作もあるライターの江國まゆ氏は「そもそもマズいと思っているのは、最近のロンドンに来たことがない人。実は、こちらでは’90年代から“美食ブーム”が始まっていたんです。食への保守的なこだわりの少ないイギリスでは、ここ20年ほどで作り手もお客も洗練されてきて、価格帯に関係なく業界全体のレベルが急上昇しました」と外食産業の変化を語る。では、庶民の家庭料理は? そもそもなぜマズいと思われいるのだろうか。
「煮すぎ、焼きすぎ、揚げ物尽くし。イギリス料理は世界一マズい」などと、昔からいわれ続けている。なぜここまでイギリス人には“味オンチ”のイメージが定着してしまったのだろうか?
江國氏は「ごく一般的なイギリス人は、フランス人やイタリア人のように『食にこだわる』気質が薄いように思います」と語る。
「外食の質が向上したとはいえ、家庭では現在も簡素な食事を取っている人がほとんど。サンドイッチを発明して仕事の片手間に食事ができるようにし、7つの海を制し、蒸気機関車を造り、郵便システムを整備し、テレビやコンピュータを発明しました。情熱の向く先が異なるというだけの話なのかもしれません」
そのこだわりのなさが、’90年代以降、各国料理やシェフを受け入れて急成長することにつながったのだろう。
「とはいえ、タラとジャガイモを揚げたダブル・フライのフィッシュ&チップスや、ミート・パイにマッシュポテトを添え、シャバシャバで薄い緑色のパセリ・ソースのかかったパイ&マッシュは、昔とほとんど変わらない庶民の料理。
またウナギのゼリー寄せは、いまだに『イギリス飯はマズい』というイメージを持たれる原因の主役級とも言える、下町の不思議な食べ物です。イギリス全体の外食レベルが急上昇しているといっても、こうした料理の中にはまだ日本人の口に合わなそうなものもありますので、注意してください」
<取材・文/週刊SPA!編集部>
― [イギリスの飯はマズい論争]最終決着 ―
質が向上したとはいえ、変わらないものも……
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ