「イギリスの飯はマズい」はもはや過去? 外食レベルが上昇した理由
現在のロンドンは、今やパリよりも注目の美食都市として地位を確立しているのだという。「イギリス飯はマズい」というのは“定説”だが、実際のところはどうなっているのか? 現地からリポートする。
イギリスが3月29日としていたEU離脱(ブレグジット)を最長で10月31日まで延期、揺れまくっている。巷では「EUを離脱したら、料理レベルの高い各国から来た優秀なシェフが出ていって、マズいと定評のあるイギリス飯がさらにマズくなってしまうのでは?」という懸念の声も聞こえてくるという。そんなイギリスの料理事情を探った。
イギリス在住20年で『ロンドンでしたい100のこと』(自由国民社)などの著作もあるライターの江國まゆ氏は「そもそもマズいと思っているのは、最近のロンドンに来たことがない人。実は、こちらでは’90年代から“美食ブーム”が始まっていたんです。食への保守的なこだわりの少ないイギリスでは、ここ20年ほどで作り手もお客も洗練されてきて、価格帯に関係なく業界全体のレベルが急上昇しました」と語る。
その土台を支えているのは、欧州各国からの労働力と食材だという。約7万人のフォロワーを持つフード・ブロガーのクリス・ポップル氏はこう語る。
「給仕スタッフとして欧州内からの移住者がどれだけ働いているか、安くて良質の食材が欧州からどれだけ輸入されているかを見れば、EU加盟の影響が大きかったということがわかるでしょう」
イギリス料理レストランの日本人ヘッドシェフ、石川浩史氏も同じ見方をしている。
「この20年で、人の移動だけでなく食材の流通も盛んになりました。例えばフランスやオランダから来る濃厚な味の野菜、イタリア、スペインの質の高いオリーブオイル。これまで食材にこだわらなかったイギリス人に大きな刺激を与えました」
EU圏出身の従業員1500人を抱える老舗イタリアン・チェーン「カルッチオズ」は今年、「イギリスに5年以上在住して永住権の取得権を持つ全員に、ビザ取得費を支給する」と発表。多くの従業員がEU離脱での失職を不安に思うなか、最高経営責任者のマーク・ジョーンズ氏は「(初代の)アントニオ・カルッチオがイタリアから移民し、当レストランを創業していなければ現在の我々はありません」と述べたのだ。
マズいと思っているのは、最近のロンドンに来たことがない人
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