更新日:2023年03月20日 11:20
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GW、海外旅行に行く人は必見!スリ、詐欺、暴行にあわない安全対策

“善意のフリ”をしたトルコ・イスタンブールの靴磨き詐欺

 ここまで偉そうな講釈を垂れてきた筆者もトルコのイスタンブールの新市街で詐欺の被害に遭ったことがある。その手口がどうだったのか紹介しよう。  この日は8月の炎天下で、汗が噴き出すような暑さだった。日曜で新市街のオフィスは休みで人通りもかなり少なかった。歩いていると靴磨きセットを両手で抱えている男が前方を歩いていた。すると男は靴の表面の汚れを拭くブラシを落とした。男はそれに全く気がついていないようだ。筆者は反射的にブラシを拾い、大声で叫ぶが気がつかない。  そこで筆者は、肩を叩いて教えてあげた。近くで見ると、その男は口ひげを生やし、目が優しそうな50代ぐらいの男だ。彼は笑顔で礼を言ってくる。俺が行こうとすると、引き止められた。 「ミスター、あなたはジェントルマンで優しい人だ」 「当然のことをしただけですよ」 「お礼にあなたの靴を磨かせてくれないか?」    著者はスニーカーを履いていて、磨かれても困る。断ったが、磨かせてくれとしつこく食い下がってくる。 「どうせ後からカネでも取るんでしょう?」 「いや、あなたからはカネは取らない。無料でいいよ、礼をしたい。さあ、ここに靴を置いてくれ」  すでに怪しいとは思っていたが、“旅行作家魂”でこれからどうなるか試してみるのも悪くない。現地通貨で約300円の紙幣もポケットに入っているので、もしも本当に善意ならチップとしてあげて、カネを請求されたらこれを渡して逃げよう。  靴を台に置くと、ブラシで磨き始め、水で濡らす。男は饒舌になる。 「僕はアンカラ出身でイスタンブールには出稼ぎに来ている。君、子どもはいるか?」 「独身だよ」 「僕は子どもが二人いる。家族が腹を空かしているから大変なんだ」  男はかなり早口で話しかけてくるが、悪いことを企んでいる人間はやたらと饒舌になり、自分のペースにしようとする。これは世界共通だ。  

事前に治安情報を調べておくべき

   両方の靴を磨いた後、今度はクリームを塗り始め、その3分後、男が言う。 「さあ、終了だ」 「ありがとう」  筆者が笑顔で返した途端、男の表情は一変した。目を吊り上げ、ドスの効いた声で脅迫してくる。 「カネを払え」 「は? あの、あなたはカネはいらないって言ったよね?」 「そんなわけはないだろ。腹が減っているし、子どもたちも飢えている。カネをくれ」  いくらカネに困っているからといって、人を騙して、善意を利用することは許されん。喧嘩でもしてやろうかとも考えたが、もともと「詐欺かどうか」の実験でもある。たとえ詐欺でも少しは払おうと思っていたので、当初の予定どおりに300円分の紙幣を出すと、思わぬ答えが返ってきた。 「それじゃねえ、10倍のカネをよこせ」    さすがに頭にきてブチ切れそうになる。 「今、なんて言った?」 「10倍よこせ!」 「そんな価値はねえよ、ふざけんな!」  この時、道を通る人は皆無だった。もしも男の仲間が集まってきたら、大声を出しながら逃げるだけである。だが、男は一人だけだ。 「俺はこれしか渡さない。もう行く」  立ち去ると、後ろから罵声が聞こえたが無視した。結局、追ってくることはなかったが、もしもこれ以上しつこく付きまとってきたらどうするべきか。考えられるものは3つだ。   1.「お前、しつこいからポリスを呼ぼう。そこで話そう」と言う。 2.近くにホテルや店があれば、入って助けを求める。 3.徹底的に口論をして通行人がいたら味方につける。  現実的には1と2がいいだろう。3は相手が逆上する可能性もあるので上級者向きかもしれない。    ホテルに戻ってネットで調べてみると、「靴磨き詐欺」はイスタンブールで問題になっていて、被害に遭った人のコメントがたくさん寄せられていた。手口は筆者の時とほぼ同じだが、中には仲間がたくさん来て囲まれた例もあるようだ。
嵐よういち

これまで世界83か国を旅してきた旅行ジャーナリストの筆者(嵐よういち)

 基本的なことだが、ゴールデンウィークにどこか海外に行く予定の人は、事前に治安面でも下調べをしておくといいだろう。くれぐれも注意して楽しい旅行を過ごしてほしい。<取材・文/嵐よういち>
旅行作家、旅行ジャーナリスト。著書の『ブラックロード』シリーズは10冊を数える。近著に『ウクライナに行ってきました ロシア周辺国をめぐる旅』(彩図社)がある。人生哲学「楽しくなければ人生じゃない」
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