タワーマンションと言えば、なんだか高級なものと思われがちだが、実際に普及しているものは(最上階を除けば)比較的、無難な仕上がりに留まっていることをご存知だろうか。

写真はイメージです(以下同じ)
確かに建築基準法が改正された頃に建てられたものは、本当に贅沢に仕上げられていたのだが、世間一般に供給を後押した2000年以降は、建築にかかるコストが上がってしまったせいもあり、レベルを下げ、あくまでも“高級風”な仕様に納めることになったのだ。こうすることで、会社員がローンを組めば手が届くような価格設定にしたとも言える。
では、東京オリンピックを目前に控えて、史上最も多くのタワーマンションが供給されている現在、いったいどれを選び、どれを避ければよいのだろうか。
20-30階クラスのタワマンを選択肢に
正直、マンションの建物本体にはさほどの差は見受けられない。地震が多いこの国では、世界に類を見ないほど厳しい建築基準法が整っており、これに従えば建物は大抵の物が充分に強度を持っていると言えるからだ。
もちろん、先日話題に挙がったL社の“手抜き”とも呼べる杜撰な施工は論外だし、D社のような“不適合”という管理上のエラー問題を除外すれば、基本的にはほとんどが強固であると考えられる。
では何をもって見極めればよいのか。
ひとつには、経済的な価値観の近い人達が集まるマンションというのが目安になるだろう。「マンションを買うなら管理を買え」、一度は耳にしたことがあるのではないか。土地の完全な所有権を持つ一軒家と異なり、区分所有建物というのは、赤の他人同士が、長期にわたって鉄筋コンクリートの箱を共同管理していくものである。もちろん必要に応じて、補修保全を施していかねばならず、かかる費用も頭割りだ。
しかし管理組合にも多数決に近い民主主義が反映されるため、反対意見が出るとその計画も立ち行かなくなる。そしてここで出てくる反対意見について、深く追及していくと、往々にして金銭的な制約に行き着いたりするのだ。
これを避けるには、
価格帯に大きな差が出ていないマンション、階層で言えば20-30階クラスのタワマンまでが検討の対象となり得るだろう。
この規模までは、同じ床面積であれば価格差が最大でも1000万円くらいに納まり、今の低金利で借り入れていれば
ローン返済額はせいぜい月4万円ほどの差額である。
これが50階規模になると、節税のために高額をつけられた部屋を除いても、同一マンション内での価格差が大き過ぎて、住民間の経済格差があることは否めないのだ。是非ともタワーマンションの中では規模が抑えられたものを選択肢に加えていただきたいものだ。

湾岸エリアのタワマンは危険?
ふたつめとして、
住宅街という環境が周りにあるマンションを挙げておきたい。基本的には「複数の世代が住む」ことがコミュニティには必須である。人は平等に歳を取っていくからだ。
新たな開発が呼び水となり、ファーストバイヤー(初めて物件を購入する人)である新婚・子育て世代が数百単位で押し寄せる様相は、実は過去にも例がある。ドラマの舞台となり一世を風靡した多摩ニュータウンだ。同世代が固まって住むことで、共通の子育て問題に対策も打てて、メリットもたくさんあったわけだが、当然、人は同じ様に歳を取る。
マンション内のコミュニティがまんべんなく高齢化することは、
管理組合が高齢化することであり、変化に対するバイアスがかかりやすくなる。しっかりとした管理が行き届かなかった結果があれである(ただし多摩ニュータウンは大規模な建て替えの合意にこぎつけ、新たな世帯を呼び込むことに成功した初めての事例でもある)。
タワーマンションに関しては、外装の長期保全について、大手ゼネコンでさえも尻込みしているのが現状であり、建て替え等という選択肢はまだ誰も想定出来ていない。高齢になったあなたが組合で立ち上がったとしても、多摩ニュータウンの事例はあくまでも参考にしかならないのだ。
同様な世帯の偏りという観点からすれば、湾岸エリアのタワーマンションはあまりおすすめはできない。埋立地に乱立して呼び込んだ世帯の子どもたちが、既に入りきらない小学校がある。臨時で増設しているものの、正式に建設するには至らない、完成する頃には彼らは中学・高校へと進学していくので、その後は持て余してしまうからだ。
東京オリンピックの閉会後に、周辺が上手に活用されるとしても、このエリアはある程度人が離れるとも推測される。それを悲観するのではなく、新たな世代を呼び込む機会と捉えられればよいのだが、少なくとも私にはその名案が浮かびかねるのである。