那須川天心がメイウェザー戦を振り返る「世界中の人々に僕のことを知ってもらえたことは大きい」
――実際に拳を交わしたメイウェザーの感触は?
那須川:最初は笑みをこぼしていたけど、それは演じていると思いました。それで自分からちょっとフェイントをかけて攻撃したら、全部それに反応してきた。その時点で強いと感じたので手を出しづらかった。そうしたら向こうからストレートを出してきた。自分が動こうとしたら向こうから動いてきた感じでした。
――やりとりが激しくなるなか、那須川選手の左が一発当たりました。その直後、メイウェザーの態度は明らかに変わりましたよね。
那須川:構えやステップが変わりました。いつもはL字ガードで闘うのに、普通にガードを上げてきた。体格差や体重差があったので、僕にとっては一番イヤな闘い方をしてきたわけです。試合前からそういう闘い方をされたら、ちょっと対応できないと思っていました。
――エキシビションとはいえ、メイウェザーは負けない闘い方にシフトチェンジしたわけですね。
那須川:そうですね。吹っ飛ばされる感じがしたので、(自分が喫したダウンの中では)最初のダウンが一番ビックリしました。メイウェザーのパンチは単純に重たかった。しかも、耳の裏を狙って打ってきたんです。
――耳の裏にある三半規管が麻痺したら平衡感覚がおかしくなる。でも、後頭部を狙ったパンチは反則なので、限りなくグレーゾーンに近いパンチだったと思います。
那須川:そうなんですよね。視界がグラグラきた感じでした。ああいうのは初めて味わう感覚でしたね。
――最後は3度目のダウンを喫したときにセコンドがタオルを投入する形で終止符が打たれました。
那須川:もっといろいろ吸収したかったという思いはありました。本気で挑んだので、「もっとやれたら」という思いしかなかった。
――試合当日、体重差は10㎏以上あったと思われるので、このマッチメークに疑問を呈する声もありました。試合前から那須川選手の耳にもいろいろな意見が入ってきたのでは?
那須川:「挑戦を見られてよかった」「勇気をもらった」という声がある一方で、「やらないほうがよかった」という声もありました。ネットニュースは普通に通知が来たら見るほうだけど、(マイナス面の書き込みは)全く気にしない。
――ポジティブですね。
那須川:やっぱり自分が好きじゃないと、この競技はやっていけない。どんなジャンルでも極めることができる人は自分好きだと思う。昔、学校で先生から「自分のことを堂々と好きだと言える人は?」と聞かれたとき、僕は即座に「ハーイ!」と手を挙げたけど、周りはシーン。あのときは「何でだよ!」と思いましたけどね。
※4/23発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【那須川天心】
’98年、千葉県生まれ。5歳から父の指導のもと、空手の修行に打ち込む。’14年7月、15歳でプロデビュー。翌年5月、6戦目でRISEバンタム級王者を史上最年少で奪取した。現在は初代RISE世界フェザー級王者。TARGET所属。キックの通算戦績は29戦29勝(22KO)
取材・文/布施鋼治 撮影/ヤナガワゴーッ!
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