更新日:2023年03月21日 16:18
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米中衝突、関税バトルの行方 チキンレースに勝つのはどちらの国?

米国寄りか中国寄りの国に世界は二分される

 実際、日本の経産省が’18年4月にまとめた「中国と米国、EU、一帯一路関係国との貿易額比較」を見ると、米国への輸出4330億ドルに対して、一帯一路関係国への輸出は6400億ドル、EUへの輸出は3740億ドルと、米国との取引き以上に活発なのがわかる。さらに、1年前には62か国だった一帯一路の参加国は133か国へと2倍以上に増えており、貿易額も2倍程度に膨張していることが窺い知れるのだ。遠藤氏が続ける。 「先頃、開催された第2回一帯一路フォーラムには150か国が参加しており、国連参加国が193なので、ほぼ全世界が参加しているといっても過言ではない規模まで膨らんでいる。これはつまり、近い将来、中国が主導した米国抜きの巨大貿易圏が誕生する可能性が出てきたことを意味しています。仮にそうなった場合、中国を核とする“グローバル経済”を標榜した150余りの国と、孤立した米国とこれに追随するわずかな国に世界が二極化されてしまう。  振り返れば、トランプ大統領はパリ協定、TPP、そして先頃はイラン核合意からの離脱……と、『アメリカ・ファースト』の名のもと、孤立化の道をひた走っており、こうしたトランプの振る舞いが、習近平主席にとっては好機となっていると考えていい。米国が独りよがりの道に突き進むほど、習金平は『人類運命共同体』といった誘い文句を用いて、発展途上国はもちろん欧州までも自陣に引き入れようとしているのです」  そんな中国の腹のなかを見透かしてか、現在、米国の連邦議会では、トランプ大統領以上に強い口調で「中国脅威論」が湧き起こっているという。前出の渡邉氏が話す。 「先の中間選挙を見ると、“パンダ・ハガー”(親中派)の議員は一掃されており、残っているのは民主党のバイデン元副大統領くらいで、日に日に対中強硬派の声が大きくなっている。米国が昨年制定した外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)と輸出管理改革法(ECRA)には、安全保障上問題と思われる国に対して、米国の最先端技術や重要インフラにかかわる14分野で輸出禁止措置を取ることを定めているが、これはあからさまに『中国製造2025』を標的としたもの。  今回のファーウェイ排除は、昨年、中国企業を規制するためにつくった国防権限法(NDAA)2019に基づいたもので、大統領令を下せばテロリストや敵対国に対してあらゆる対抗措置を取ることも可能となっている。中国は、保有残高が約1兆1000億ドル(約120兆円)に上る米国債を売却するという“伝家の宝刀”を持っているが、国防予算を縛れる国防権限法を発動すれば、中国が勝手に米国債を売り払うこともできなくなる」 米中衝突 5月15日、中国が米国債を3月に204億ドル(2兆2000億円)売り越し、保有額が2年ぶりの低水準に圧縮されたことが明らかになっている。中国が米国債の投げ売りという最終手段に出れば、世界経済がさらに混迷を深めるのは必至だが、この泥沼の戦いは一体いつまで続くのか……。しばらくは目が離せない。   * * *

中国が報復として米国債を投げ売りする可能性は?

 第4弾となる対中関税制裁が発表された後、中国政府系・環球時報の幹部が投稿した「多くの中国の学者が米国債を圧縮する可能性を議論している」というツイートが物議を醸している。投げ売りが始まれば、米国債の長期金利は上昇。急激なドル高・元安が進み、中国から資本の流出が始まるため、可能性は低いと見られているが……。 取材・文/週刊SPA!編集部 写真/AFP=時事 Avalon/時事通信フォト ※5/21発売の週刊SPA!「今週の顔」より
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週刊SPA!5/28号(5/21発売)

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