更新日:2019年09月27日 15:37
ニュース

日本の消費税アップは愚策か?アメリカvs中国は減税合戦/江崎道朗

ニュースディープスロート

昨年12月1日、G20が開催されたアルゼンチンで、米国のトランプ大統領(右)と中国の習近平国家主席が会談。米中貿易戦争の激化は当面は回避されたが、問題は先送りされただけ。景気が失速してきた中国は今年、さらなる大型減税に踏み切る(写真:Dan Scavino Jr.公式Twitterより)

世界経済を牽引するために日本も減税に踏み切るべき

 米中貿易戦争の第1ラウンドは、トランプ政権が圧勝した。何しろトランプ政権は政権発足当初から、用意周到に準備を進めてきた。  トランプ政権にとって米中貿易戦争は安全保障政策だ。このまま中国の軍事的経済的台頭を容認すれば、アジア太平洋は中国に支配される。だが、中国は口でいくら言っても聞くつもりがないことから、Diplomacy(外交)だけでなく、Intelligence(スパイ工作の摘発といったインテリジェンス)、Military(軍事)、Economy(経済)の4分野で中国を追い詰めようというのだ。  その頭文字をとって「DIME」と呼ばれる総合戦略のもと、貿易戦争という形で中国の経済力を削ろうとしているわけだ。この貿易戦争では、中国からの輸入品に対して関税をかけるが、そうなると中国からの輸入品が割高になり、米国内の消費者にダメージを与える。国民から支持されなければ、中国との戦いは継続できない。  そこでトランプ政権は米中貿易戦争、関税による物価高を前提に国内対策を打ってきた。具体的には①大型減税に踏み切り、②徹底した規制緩和、特に石油や天然ガスに対する環境規制の緩和、③老朽化したインフラ整備、④国防費増大による防衛産業の振興、そして⑤中国による知的財産侵害を是正し、米国の製造業を復活させる、といったものだ(安達誠司『ザ・トランポノミクス』朝日新聞出版)。
次のページ right-delta
追い詰められた中国はさらなる大型減税へ
1
2
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保

経済的安全をいかに守るか?


経済的安全をいかに守るか?実践的な入門書が発売!

 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

 日本の経済安全保障を確立するためには、国際情勢を正確に分析し、時代に即した戦略立案が喫緊の課題である。江崎氏の最新刊『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』は、公刊情報を読み解くことで日本のあるべき「対中戦略」「経済安全保障」について独自の視座を提供している。江崎氏の正鵠を射た分析で、インテリジェンスに関する実践的な入門書として必読の一冊と言えよう。

記事一覧へ
おすすめ記事