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親子ともに発達障害を疑われ…不安とどう向き合う?

子どもも自分も発達障害だった

 僕はカクテルを作りながら、改めて先輩を観察してみました。当時と比べて明らかに顔つきが変わっています。とても明るくて、活発だったころの面影はほとんど見られません。結婚して、子育てをして……という、当たり前とされるライフワークですら、きっと彼女には大きな苦労を与えてしまったのかもしれません。 光武「はい、おまちどうさま」 佐藤「ありがとう。うん、これ飲みやすいね。このお酒私好きかも」 光武「それはよかったです。そういえば、先輩。相談があるっておっしゃってましたよね?」 佐藤「うん、実はね……。ちょっとメールにも書いたんだけど、私、3歳の娘がいてさ、発語がちょっと遅いかなぁってくらいに最初は思っていたんだけど、幼稚園でいろいろトラブル起こしちゃってね。  一人だけ先生の指示を無視してずっとおもちゃで遊んでいたり、自分のペースを乱されるとパニックになっちゃって、ほかの子を叩いちゃったりしてるんだ。家の中でもそういう傾向があるから、私も参っちゃってさ。それで医者に相談しに行ったら、まだ確定ではないけど、自閉症スペクトラムの疑いが強いって話をされたんだ」 光武「なるほど。そうだったんですね」
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※写真はイメージです(以下、同)

佐藤「うん、でね。やっぱり手がかかるんだ、うちの子。発達障害の子育てとか勉強したりさ、いろいろ頑張っているうちに私の方が参ってきちゃって。この前、双極性障害って診断されたんだ。  加えて、私自身にもADHDの疑いが強いから、これを機会に、カウンセリングを勧められちゃってさ。主人は、私が子育てをサボっているというし。この状態で、家事やって主人の世話もして……」 光武「………。先輩、本当に大変でしたね。双極性障害ということは、鬱の状態と躁の状態が交互に来ているかと思うんですけど、今日は外に出られてよかったです。双極性がひどいと、外出が困難になってしまいますからね。本当にお疲れ様でした」 佐藤「うん、ありがとう……。ちょっと疲れちゃってさ。私自身、自分まで発達障害だと言われたり、双極性障害も出てきちゃうし。お店ってどんな人が来るのかなって思ってさ。支離滅裂だけど、ごめん。全然頭の中がまとまらなくて……」  このBRATsをオープンさせて約1年半。本当にいろいろなお客様がいらっしゃいました。最近は、ご家族に当事者がいるというケースも増えてきています。カサンドラ症候群に関しては以前に取り上げましたが、このように自分の子供が発達障害を抱えており、そのことがきっかけで自分にもその気質があったと気づかれる佐藤先輩のようなケースも何組かあります。 光武「先輩。無理に話さなくてもいいんですよ。自分のペースでいいですからね」 佐藤「うん、大丈夫だよ。ちょっと一気に感情があふれてきちゃってさ」  そういって彼女は一気にカクテルを飲み干しました。 佐藤「もう一杯、同じものをもらってもいいかな?」 光武「先輩、無理しないでくださいね」 佐藤「うん、大丈夫だよ」
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ADHDの女性は生きづらい?
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※ユーチューブチャンネル「ぽんこつニュース」でも光武さんが発達障害バーの日々を配信中

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